おとうさん。雨が、降ったり、やんだり。

   ほんとに。きょうは。忙しい、日だよねえ。

  こんな、日でも。道に、出れば。メジロが、『こんにちわ。』だよ。

   植え込みの、花に。来ているん、だよね。

  しばらく、散歩してたらね。アオスジアゲハに、モンシロチョウ。

   『雨が、降ってきたら。どうするん、だろう。』って。

   いらぬ、心配を。してしまい、ましたよ。おとうさん。

  この世に。生を、受けると。いうことは。万物、みな同じ。

   自分の、意思では。どうにも。できないもの。

   この日に、生まれたいと。思っても。ままならず。

   生まれる地を、選ぶことも。生まれる時を、選ぶことも。

    できないんだ、ものね。おとうさん。

  チョウチョだって。こんな。天気の、日じゃなくて。

   できることなら。晴れた、日に。生まれて、来たかった。だろうしね。

  でも。この世という、大海に。放り出された、以上。

   あの、チョウチョ達だって。

    文句、いって。られないんだよね。

   自力で、生きて。生き抜いて、いかねば。ならないんだよね。

    きょうが。雨だとか、なんとか。

     言ってる、場合じゃ。ないんだよね。

  そういえば、おとうさん。

   「金より。自分で、生き抜く。力の方が、大事なんじゃ。」

   「なんでも、ええ。」

   「自分に。自信を、もてるもんを、もて。」いうて。

   二人に、できる限りの、ことを。してあげたよね。

   習いごとも、そうだけど。学校も。なにもかも。

   「あんた、とこ。どれだけの、金持ちなん。」

   「やめとけば、ええのに。」って。

    周りの人に、言われながら。

   「なんでも、経験しとけ。経験は、自分の、財産になる。」

   「稼ぐに追いつく、貧乏なし。言てなあ。」

   「お金は、後から。ついて、くる。」

   「費用は。なんとか、なるもんじゃ。」って。

   いうのが、おとうさんの、口癖だったよねえ。おとうさん。

  そういう、割には。いつの、頃からか。

   おとうさんの、ビールが。発泡酒になり。

    ウイスキーが。焼酎に。代わって、いったんだけどね。

     ねえ。おとうさん。