おとうさん。おはよう。

  雨が、よく降りますねえ。大きな、被害が。でませんように。

  この、梅雨空を。うっとうしいと、思うか、思わないか。

   それは。その人、しだい。

  でもね、おとうさん。ジューンブライドとか、いって。

   『六月の、花嫁は。幸せになる。』とか。

   『幸せが、降りこんでくる。』とか。

    言うじゃあ、ありませんか。ものは、考えようですよ。

  現に。わたしが、結婚する時。祖母は。

   「よかったなあ。幸せが、降りこんで来る。いうんじゃ。」いうて。

   喜んで、くれたもんね。おとうさん。

  幸せが。降りこんで、来たか。どうかは、分らないんだけど。

   おとうさんとの、結婚生活は。

    本当に。幸せ、だったんだよね。おとうさん。

  二人とも。実家は、遠いから。特に、子育ては。手探り状態で。

   二人で、相談して。見よう見まねで、してきたんだけどね。

   それだけに。失敗したことも。いっぱい、あるけど。

    それも。今は。いい思い出に、なっているよね。おとうさん。

  そういえば。あの、『何とかボーロ』。

   この間。スーパーで、売ってましたよ。おとうさん。

    懐かしの、お菓子コーナーでね。

   「わしらが、こまい時。あの、ボーロが、はやっとって。」

   「赤ちゃんには。あれを、食わしとった。」いうてね。

   ブームが、下火に。なってたのに。

    わざわざ、探して。買って、きてくれてね。

    一粒。口に、入れてやっては。

   「うまいやろ。なあ。」

   「ほら、見てみ。この顔。」いうて。

   ニコニコしてたのは。

    子どもより。おとうさんの、顔だったんだよね。おとうさん。

  そのくせ。少し、大きくなって。

   わたしが、忙しいから。

    「おとうさん。本読み、たのむね。」って。

    たのんでいた、つもりだったのに。

    子どもより、おとうさんの方が。早く。眠って、しまってね。

   「おれ。おとんに。本。読んで、もろうとらん。」

   「おとんの、方が。早よ、寝とった。」って。

    後日談を、聞かされて。苦笑いを、してたりねえ。おとうさん。

  外の、雨音を、聞いていたら。

   結婚当初の、頃を。思いだして。笑って、しまいましたよ、おとうさん。

    六月の、花嫁は。幸せに、なるってね。

     ねえ。おとうさん。