雨の、合間をを。楽しむかのように。カラスアゲハが、飛んで、いましたよ。

   どこかに、サンショウの、木でも。あったん、でしょうかねえ。

   カラスアゲハの、幼虫は。サンショウの、葉っぱが。好物なんだもんね。

  おとうさんの、好きなものと、言えば。今日のような、暑い日は。

   ビールでしたよねえ。それも、瓶ビールがね。

   「わしは。缶ビールより、瓶ビールが、ええ。」いうて。

    ずっと、瓶ビール、だったんだよね。おとうさんは。

   「ビールは。こうやって。つぐもんじゃ。」いうて。

   おとうさんに、なんど、教えられても。飲まない、わたしは。

    いっこうに、これだけは。うまくならな、かったよねえ。おとうさん。

  缶ビールなら、いらないんだけど。

   瓶ビール好きの。おとうさんの、ために。

   栓抜きは。今でも。大事に、おいてあるんだよね。おとうさん。

  そういえば。栓抜きの、反対側は。缶切りに。なって。いるんだよね。

   いまは、ほとんど。使うこと、なくなって。しまったん、だけどね。

  息子たちが、小さい時。

   「男の子が。缶切りが、使えんようでは。困る。」

   「ええか。おとんのを。よく、見とけ。」

   「缶の、ふちに。こうやって。缶切りを、かけて。」

   「力を、いれて。おしたり、ひいたり。」

   「ようは。てこの原理じゃ。」

   「ぎっこん、ばっこん。いうてな。」

   「ほら。やってみい。」いうてね。

    二人に、缶切りを。よく。させて、いたよねえ。おとうさんは。

   缶切りを。上下させる、だけの。簡単な、ことなんだけど。

    「おとん。いっこも、切れへんで。」

    「兄ちゃん。缶切りが、すべっとるで。」いうて。

    子供に、とっては。難しい。作業、だったんだよね。

     力の、入れ方が。分らなくてね。

   今頃の子に。栓抜きや、缶切りを。見せても。

    それが。なにに、使うものか。

    分からないかも、しれないよねえ。おとうさん。

    今は。簡単に。ふたが、開くから。必要ないしね。

   だから、今となっては。おとうさんが、教え込んだことは。

    無駄の、ように。思えるんだけど。

    そうじゃあ。ないんだよね。おとうさん。

   息子たちには。いい勉強に。なって、いたんだよね。

    それにねえ。おとうさんとの、いい、思い出でにも、なっているし。

      ねえ。おとうさん。