「おかん。酸っぱい、ないんは。梅干しじゃ、ないんや。」

  「そう、いうとるで。おっちゃんが。」

  次男が。戻って、くるなり。梅干し談義だよね。

  日頃。あまり、梅干しを、口にしない。くせに、ねえ。おとうさん。

  「おとんが。田舎の、梅干しを、食うたら。」

  「これが、ほんまの、梅干しや。いうとったけど。」  

  「仕事場の、おっちゃんが。同じこと、いうとった。」って。

   いうんだよね。

  もともと、梅干しは。保存食だったから。

   長持ちするように、作られて。いたんだものね。

   だから、田舎では。しっかり。塩を、してたよねえ。

   その、過程で。クエン酸が、作られて。酸っぱく、なるんだけど。

   ほんと。思い出しても。つばが、出るよ。

    酸っぱ、かったよねえ。田舎の、梅干しは。

  近頃は。減塩だの、酸っぱいのは。嫌だのと、いって

   クエン酸が。どっかに。いって、しまったものも。あるんだけどね。

  おとうさんは。どっちかと、いうと。

   田舎の、しっかりした。あの、梅干しが。好きだったよねえ。

  いつかも。クラブの、おばさんが。

   「わたしは。これじゃあないと、あかんのんよ。いうて。」

   「自分で、漬けた。いうて。くれたんじゃ。」言うてね。

   自分で、漬けた梅干しを。もらって。きてたこと、あったよねえ。

   『さすがに、あれは。田舎の、味。』ってね。

    酸っぱ、かったよね。おとうさん。

  『味覚と、いうのは。三歳までに、決まる』って、いうから。

  あの、酸っぱさも。忘れられない。味なんだよね。おばさんに、とっては。

  梅干しは、体に、いいし。

  『一日、一つの梅干しは。難のがれ。』とも、いうからね。

  「暑い日は。一つ。パクっと、しなさいよ。」って。

  おとうさんが、いたら。言うだろう、なあって。思ってね。

   梅干しを。持って。帰らせましたよ。息子にね。

  おとうさんが、はまっていた。

   二度漬け、してあるから。

   減塩だけど。酸っぱさの、のこった。あの、梅干しをね。

  次男が、言ってましたよ。

   「これは。おとんが、好きじゃった。梅干しや。」いうてね。

     ねえ。おようさん。