おとうさん。きょうは。きれいな、花が、たくさん、買えました。

    うれしいですねえ。とっても、安くて。二度、嬉しい。

    喜んで、かえって。きましたよ。

   おとうさんが、元気な時は。

   たいてい。少し、高い。ウイスキー、でしたかねえ。プレゼントは。

    ニコニコしながら。

   「ちょっと、口が、はれるかなあ。」って。冗談を、いいながら。

   笑って、いた。おとうさんの、顔が。目に、浮かびますよ。おとうさん。

   そして、お昼は。たいてい、握り寿司、でしたかねえ。おとうさん。

    きょうは。息子が。

   「おかん。あそこ、行って、みたいと、思わん。」いうてね。

    どこだと、思います。おとうさん。

   あの、ラーメン屋さん。ですよ。おとうさん。

  田舎に。帰って、いた時。必ず、寄っていた。ラーメン屋さん、ですよ。

   「ここの、ラーメンは。うまいんじゃ。」いうて。

   おとうさんに。あそこに。つれて行って、もらったのは。

    いつだったか、しらねえ。おとうさん。

   思いだそうと、思っても。ぜんぜん。覚えて。いないんですよ。

  それなのに、ねえ。

   息子が。ラーメン屋さんのこと。覚えている、ぐらいだから。

    それだけ。何回も。行ったと、いうこと、ですよねえ。おとうさん。

   田舎の、帰りに。夜中の、三時ごろ。

    必ず、あそこの、前を。通ったんだよねえ。

   そしてねえ。おとうさん。

   「普通の、ラーメン。二つ。」って。注文してたのに。

   それが。

   「チビラーメン、ふたつ。普通の、ラーメン、ふたつ。」に、なって。

   いつの間にか。

   「ふつうの、ラーメン。四つ。」に。なったんだよね。

   子供たちが、いなくなって。夜道を、走らなくなって。

  あの、ラーメン屋さんに、いくことも。

   なくなって。しまったん、だけどね。おとうさん。

  せっかくの。息子の、さそいだけど。今日は、やめとくね。おとうさん。

   ちょっと。あそこまでは。遠すぎるしね。

   せっかくなら。あの時間。おとうさんと、行ってた。

   いつもの、時間が、いいよねえ。おとうさん。

  おとうさんの、思い出話を、しながら。

   あそこで。ラーメンを、食べるのならね。

     ねえ。おとうさん。