マンションの。階段を、降りていたらねえ。

   なぜか。あのことを、思いだして。

   思わず。噴き出して。しまいましたよ。おとうさん。

   おとうさんとの。あの日の、会話を。思い出してね。

  学校の。階段の、手すりを。

   滑りおりて。遊んでいた時の。話ですよ。おとうさん。

   「わしが。中学校、行ってたときじゃ。」

   「校舎は、みな。木の階段、じゃったろう。」

   「そじゃけえ、なあ。階段の、てすりに。しがみついてなあ。」

   「馬乗りになって。よう。滑っとった、もんじゃ。」

   「危ないけえ。するな。いうて。」

   「先生には。いわれとったし。」

   「親には。制服の尻が、ダメになる。いうて。」

   「よう。おこられ、とったんじゃ。」

   「そじゃけど。面白いけえ。やめられん、かったんじゃ。」

   「その日は。大会じゃ。いうて。」

   「なんにんも、よって。」

   「大けえ子が、しとるように。仰向けになって。滑っとったんじゃ。」

   「だれが。一番ようけ、とぶか。言うてな。」

   「そしたら。前に、とび過ぎて。」

   「大けな、尻もちを。ついて、しもうたんじゃ。」

   「けがは。せんかったけど。ビリッ、いうて。」

   「尻んとこが。裂けて、しもうたんじゃ。」

   「尻の、布が。薄う、なっとったんじゃ。」

   「おとうさん。怒られた、じゃろう。」って。

   わたしが、いうたら。

   「怒られるんは。まあ。しょうがないん、じゃけど。」

   「うちは。貧乏じゃけえ。新しいのは。買うて、やられん。いうて。」

   「ツンツルテンに、なった、制服の、尻を。」

   「おふくろに。縫うて、もろたんじゃ。」

   「かっこ悪うても。そのまま。学校へ行け。いわれて。」

   「それで、こりんのんが。子どもじゃ。」

   「学校に、行って。みんなが、やっとったら。」

   「やっぱり。わしも。しとったんじゃ。」

   いうて。笑ってたよねえ。おとうさん。

  我が家の。次男ぼう。

   子どもの時は。なかなかの。やんたろう、でしたよねえ。おとうさん。

   もしかして。あれは。おとうさん、譲りだったのかも。しれないよねえ。

     ねえ。おとうさん。