おとうさん。おはよう。

  『おとうさん。ごはんだよ。』から。

   いつのまにか。

  『おとうさん。おはよう。』に。かわって、しまったよね。おとうさん。

  きょうは。何の日かって。忘れてませんよ。あの子の、命日だよね。

   長男と、次男の。間に。この世に。生を受ける、はずだった。あの子のね。

  この世の、ことは。ままならぬもの。なんでも。突然、やってくる。

   いいことも、悪いことも。思いも、かけない時に、やって、くるんだよね。

   そのたびに、悲喜こもごも。一喜一憂してね。

   通りすぎれば、あんなことも。あったんだって。思える時が、くるのにね。

   何度。それを、繰り返しても。その、たびに。大騒ぎ、するんだけどね。

    ほんと。歌の、文句じゃないけれど。

    人って。可愛いもの、なんだよね。おとうさん。

  何でも。表裏一体って、いうけれど。

   考えて、みれば。わたしに、とって。

    おとうさんとの、別れは。ちっとも。いいことじゃあ、なかったけれど。

   いまごろ、おとうさんは。遠い、あの世で。

    あの子と。会えて、いるんだものね。

   そう、思えば。『おとうさん。よかったね。』だよね。

  そうそう。おとうさんの、為に。買ってきた。カサブランカ。

   散って、しまってね。残念て、思うでしょ。

    ところが。そうじゃあ、ないんだよ。おとうさん。

   あの。ツボミだった、一輪が。きょうは。咲き始めたんですよ。おとうさん。

  それからね。不思議なことに。

   買った時、咲いてた。三輪の、花。一輪だけが、散らないでね。

    待ってて、くれて。いるんだよね。おとうさん。不思議でしょ。

   だから。大きな、白い花と。咲きかけの、ツボミ。

    まるで、おとうさんと。あの子の、ようにね。

    花瓶の、なかで。仲良くね。おとうさん。

   「わしらは。ふたりで。仲良く、やってるから。」

   「心配せんでも、ええぞ。」ってね。

    まるで。そう、言ってるように。

   仲良く、寄りそって。咲いて、いるんだよね。

     ねえ。おとうさん。