おとうさん。おはよう。

   きょうは。天気が。不安定だ、そうだから。

    外に、出る時は。気を、つけないと。いけないよねえ。おとうさん。

  『カミナリの、多い年は。豊作に、なる。』って。いってね。

  お百姓さんに、とっては。

   カミナリさんは。恵みを。もたらすんだ、けれど。

   やっぱり。ゴロゴロくると。いやだよねえ。おとうさん。

  病院の、面会時間は。決まって、いたから。

  「どうにか。病院に。たどり着く、までは。こっち、こんといて。」

   いうて。心のなかで、祈りながら。

  近づいてくる。カミナリの、音に。ビクビク、しながら。

   あの、道を。走って、行ってた。ものね。面会の、日は。

  「きょうは。カミナリが。なっとるんやで。おとうさん。」って。いうと。

  おとうさん。むかしのこと。、思い出してね。

  「子どもん時。よう、言われたのう。」

  「どこに、おっても。ドンドロさんが、なりだしたら。」

  「大けな、声で。みっつ、数えるんじゃ。」

  「ピカッと、光って。三つ数える、間があったら。」

  「ドンドロさんは。まだ、遠くにおる。いうてなあ。」って。

  親から、教えられた。子供の、時の。話を、していたよねえ。

  「そじゃけど、なあ。おとうさん。」

  「つい。早口に、なって。」

  「いーち。にーい。さん。じゃあ、のうて。」

  「いち、にい。さん。いうて。数えて、しまうで。」って。

   わたしが、いうと。

  「まあ。音より、光のほうが。早い。」

  「ピカッときて。そんだけ、数えれたら。大丈夫じゃ。」って。

   笑った、ことが。あったよねえ。おとうさん。

  「気いつけて、かえれや。」言うといて。

  「もう。帰ったんか。」いうてね。

  帰りついた頃に。心配して。電話、してきてね。おとうさん。

  「どっちが。病人か、分らんわ。」って。

   また。ふたりで、笑ったよね。おとうさん。

  きょうは。おとうさんに。心配、かけないように。

   家で、ゆっくり。しとくからね。

   カミナリさんが、なりだしたら。

   「いち。にい。さん。」て、かぞえながら。

     ねえ。おとうさん。