おとうさん。あしたから。

  あそこで。今年も。落語家さんの、祭りが。あるんだって。

  あの時の、こと。思い出せば。

   ほんと、噴き出して、しまうよね。おとうさん。

  「おとうさん。あのなあ。ラジオで、言うてたんよ。」

  「落語家さんの、まつりが、あるんやて。」

  「つれて、行ってよ。おとうさん。」いうたら。

  「どこや。」いうて。おとうさん、いうから。

  「ともかく。落語家さんが。・・・」

  「早よ、行かんと。終わって、しまうもん。」って。

  いつものごとく。訳の、わからないことを、言う私に。

  「ほんなら、早よ、車に乗れ。いくぞ。」いうてね。

  しぶしぶながら。見切り発車で。行くことに。なったん、だけどね。

  ナビか、スマホでも。あれば。よかったん、だけど。

   そんな物の、無い時。だったん、だものね。

  わたしの。『落語家さんの。…』の、話だけを。

   頼りに。出かけた、ものだから。

   まったく。違う、場所に。出かけて、しまってね。

  おとうさんが、一生懸命、探してくれて。行った、ところが。

   祭りを。模様してる、場所ではなくて。資料館、だったんだよね。

  「ここか。ここは。商店街やで。」

  「ほんでも。ラジオで、いうとったんやもん。」

  「おとうさん、まちごうたんと、違う。」いうて。

  近くの、人に、聞いたら。

  「落語家さんの。・・・・・。」

  「はい、はい。ここですよ。」って、いうしね。

  「ほら、みてみ。まちごうとらんぞ。」

  「それでも。なあ。おとうさん。」

  「周りに。だれも、おらんで。おとうさん。」  

  「ほんなら、もう。おわったんやろか。」いうてね。

  ガッカリは、したものの。納得して。帰って、来たんだよね。

  傑作なのは、この後でね。

   わたしの、聞き、ちがいでね。

   祭りが、あったのは。なんとかいう、神社で。

   行先も。方向違いも、いいところ。だったんだよね。わたしたち。

   それが、分かったのが。あくる年でね。

  ラジオ、聞いてて。噴き出して、しまったよねえ。おとうさん。あの時は。

  あんな、ふうにね。思い出せば、おとうさんは。

   いいかげんな、わたしの、話にも。

    よく、付き合って、くれて。いたんだけれど。怒りも、しないでね。

   あれが。もし。息子たち、だったら。カミナリどころか。雨、アラレ。

    なにが、落っこちて。くるか、分からなよねえ。おとうさん。

      そう、思うでしょ。 ねえ、おとうさん。