おとうさん。マンションの、のり面。

   こんどは、ドクダミの花が、咲き誇ってますよ。

  ここでは。だれも、見向きも、しないんだけどね。

   田舎だったら。美味しい、お茶になるから。重宝してるのにね。

  「もったいないなあ。」なんて。見ていたら。

   『ゲンノショウコ』も。はえて、いたんだよ。

   ゲンノショウコは。煎じて、飲めば。すぐに、下痢止めに、きくんだよね。

   だから。別名、『いしゃごろし』って、いうんだけどね。

    医者が、いらないって。いう、意味だよね。

  「田舎には。医者は、おらんけのう。」

  「あれも。センブリも。よう。飲まされた、もんじゃ。」

  「腹が、痛い。いうたら。」

  「にがいけえ、あかん。言うのに。飲めいうて。」

  「むりやり、飲まされたんじゃ。」

  「そんでも。ようきいたなあ。あれは。」って。

   話してた、こと。あったよねえ。おとうさん。

  私たち。田舎の、こどもは。

   小さい、ときから。アロエにも。ゲンノショウコにも。

    よく、お世話に、なったもんだよね。

   切り傷も、やけども。『ほら、医者いらずじゃ。』いうて。

    アロエを、つけてくれ。

   お腹が、痛い。いうたら。『ゲンノショウコ』いうて。

  いつから、でしょうかね。おとうさん。

   市販の、薬に。頼るように、なったのは。

  そういえば。思い出しますよ。おとうさん。

   退院してた時。便秘に、なって。しまってねえ。

   どうしても。おとうさんに、飲ませたくて。

   『お腹に、いい。』と、いう。漢方の、薬をね。

   「どこに、うっとるんやろ。」いうてね。

  長男と、探し回ってね。せっかく。買って、来たのにね。

   飲んで。もらえなかったん、だよね。おとうさんに。

   あのあと。すぐ。また、入院に。なったからね。

   いまでも。台所に、ありますよ。あの薬。

  しょうもない、こと。考えて、しまうんだけどね。おとうさん。

   あの薬、飲んでいたら。もしかして。もしかして、だけどね。

    おとうさん。あの時。すこしは。楽に、なって。いたのかな。

     ねえ。おとうさん。