「おとうさん。せっかく。四国に、行くんやったら。」

  「あの。牛の、すもう。見てきたら。ええのに。」いうたけど。

  何回も、四国に。行って、いたわりには。

   見る機会、なかったよね。おとうさんは。

  牛相撲と、言っても。日本は。闘牛の、国では。ないので。

   牛には。やさしいん、だよね。

  それに。牛は、むかしから。農業の、神様として。

   祀られて、いたり。するせいか。

   四国の、牛相撲なんか。負けたほうが。賞金が、多いんだもの。

    ほんと、わらえるよねえ。

  田舎はね。牛は、いなかったから。牛相撲は。見れな、かったけど。

   けんか鳥。軍鶏が、いたよねえ。

  むしろで、囲いを、作ってね。

   その中に。鳥を、入れて。戦わせたん、だよね。

  「鳴き声、あげたほうが。負けなんじゃ。」

  「一回、鳴いた鳥は。もう、あかん。」

  「二度と。勝負には、つかえん。いうてな。」

  「うちに。よう。持って、きてたわ。負けた、鳥を。」

  「肉に、して。売って、くれんか。いうてなあ。」

  「あの、鳥は。肉が、しまっとるけえ。うまい、言うて。」

  「ちいと。たこう、売れたんじゃ。」いうて。

  おとうさんの、家で。ニワトリを、つぶして。売ってた頃の。

   話を。してくれた、ことが。あったよねえ。おとうさん。

  そして、ねえ。

  「あの。テレビで、ようやっとる。ドラマ。おに、なんとか。」

  「あれに、出てくる、しゃも鍋。いうんが。」

  「あの、けんか鳥の、肉じゃ。」いうてね。

   教えてくれてね。

  おとうさんが、元気なころ。

   道の駅に。出かけて。しゃも肉が、あると。買ってきて、くれて。

  「すき焼きも、ええけど。」

  「しゃも鍋も。ええ、もんじゃろう。」

  「こうやって。つくるんやで。」

  「これが、本場の、しゃも鍋じゃ。」いうてね。

   男の、料理を。作って、くれたよね。おとうさん。

  今度、どこかで。しゃも肉を、みつけたら。

   かならず、買ってきて。今度は、わたしが。

    おいしい、しゃも鍋を。作って、あげるからね。おとうさん。

   そのときは。やっぱり。ビールより、熱かんだよね。

    息子たちと。フーフー、いいながら。食べたいよねえ。

     ねえ。おとうさん。