おとうさん。インコの『ぼた』が、卵を産みましたよ。

   やはり、『ぼた』は。女の子、でしたよ。

  田舎から、帰って来て。しんどそうに、していたから。

   随分。心配して、いたんだよ。おとうさん。

  「インコが、いるから。田舎には。帰れんよ。」いうてね。

  今まで。おとうさん、一人で。

   田舎に。帰って、もらうことが。多かったのにね。

  今は。だれにも。預かって、もらえないから。

   ついつい。『ぼたも』一緒に。田舎まで、帰って、いるんだけど。

   インコの、『ぼた』にとっては。田舎までの、長距離ドライブは。

    とても。過酷なこと、なんだよね。

  いなかから、帰って来て。

   ここ、何回か。田舎に、帰っても。こんなこと、なかったのにね。

   目を、閉じたまま。座りこんで、しまったから。ビックリしたよ。

  これまで。何羽も、見てきたから。

   『もう、だめかな。』って。思って、しまったよ。おとうさん。

  でもね。栄養剤を、のませて。

   「がんばれ。がんばれ。」って。言って、いたら。

   少し。元気に、なってね。

   「あれ。なんや。かごの、隅。」そう思って、見たら。

   白い。かわいい、卵。なんだよ。おとうさん。

  人間でも、初産は、大変だと、いうのにね。

   長距離移動の、すえの、初産だよ。

   『ぼた』には、頭が、さがるよねえ。おとうさん。

   ほんとうに。頑張りやさん、だよね。『ぼた』は。

  そういえば。長男が、生まれた時。

  「実家の、近くには。医者がおらん。」

  「ここで、産んでも。」

  「田舎に、かえって。町まで、行って。産んでも。一緒や。」って。

   おとうさんが、言うもので。

  結局。こっちで。産むことに、なってね。

  どっちの、両親も。年寄りを、抱えていて。

   来てもらえる、ような。状態では。なかったんだ、ものね。

   だから。バック、片手に。一人で。病院に。行ったん、だけどね。

  まあ。『案ずるより、産むがやすし』とは。よく、いったもので。

   なんとか。なったん、だけどね。

  退院後も。

  お風呂、ひとつ。入れるのも。お湯の、温度は。沐浴ざいはと。

   おとうさんと、二人で、相談しながら、やったんだけどね。

  あの時。わたしには。おとうさんが、いてくれたけど。

   『ぼた』には。相談相手が、いないんだもの。

    やっぱり。心細いと、思うんだよね。おとうさん。『ぼた』はね。

    だから、私が。しっかり。気を、つけて。やらないとね。

     おとうさんが。あの、時。私を。気遣って、くれたようにね。

      ねえ。おとうさん。