おとうさん。なんでも、練習すれば。上手になるもの、ですねえ。
すぐ前の、山で。鳴いてた、ウグイス。ほんの、数日前は。
途切れ、途切れに。「ホー」とか。「ケキョ」とか、いってたのに。
ちゃんと、さえずりが。
『ホーホケキョ』に、なりましたよ。
そういえば。おとうさんが、元気だったころ。
「なんでも、身に、つけとって。損には、ならん。」
「男の子じゃけえ。魚ぐらいは、さばけんと。」いうて。
ことあるごとに。二人に。魚の、さばき方を。教えて、いたよねえ。
「ちがう、違う。」
「そうじゃあ、ない。」
「この魚は、なあ。こうやるんや。」いうてね。
ひとつ、ひとつ。手取り、足取りでね。教えたん、だよね。
きょうは。次男が。おとうさんの、代わりでね。
「キスは、三枚に、おろして。」
「ガッチョは。ちょっと、難しいんやで。」
「おとんに。教えて、もろたんや。」
「ここを、こうやって。首んとこ、少し残して。」
「くるっと、皮を。むぐんや。」
「それから。」
「背骨の、とこは。こうやって。」って。
おとうさんが。教えた、通りに。指示を、だしてね。
魚は。長男が。さばいたん、だよね。
「兄、うまいこと。さばいたで。おかん。」
「じょうずに、できたで。」
「これなら。ガッチョの、天ぷら。できるで。」
「揚げたら、チュウリップに、なるやつやで。」いうてね。
ふたりで。大さわぎだよ。
ほんと。なんでも。練習あるのみ、だよね。
うろこも。満足に、とれなくてね。
「おとん、これは、どうするん。」
「おとん。つぎは。」いうてた、息子たちが。
今では。あんな。小さな、ガッチョでも。
しっかり、さばけるように。なったん、だものね。
おとうさん。うれしいでしょう。
「教えた、かいが。あったなあ。」ってね。
思って、いるよねえ。きっと。
そうでしょう。 ねえ。おとうさん。