おとうさん。おはよう。

  夜になっても。明々として。

   むこうなら。まだまだ、ご近所さんの。起きている、時間だと。いうのに。

   どこも、かしこも。真っ暗。

  「おかん。行くか。」って。出かけてみても。

   明かりの。ついている、家が。ないんだよ。

   夕日と共に、寝て。朝日ともに。起きて、くるのかと。思ったら。

   これ、また。静かなこと。

   朝なっても。静かだよ。おとうさん。

  「イノシシも。荒らした、畑の。笹竹の。タケノコが、あるけえ。」

  「今は。山んなかじゃ。」いうて。

  どっかの、おばさんが。いうてたけど。

   夜になったら、見かけていたのに。イノシシも。見かけ、ないんだよね。

  そうそう。夜釣りは。なあんにも、無し。

  「おかしいなあ。こんなの、初めてや。」って。

   次男は、言うんだけどね。

   この前。地震が。あったから。魚も、逃げ出して、しまったのかなあ。

 「おまえら。わしの、孫か。」って。父に、言われ、そうだけどね。

  まあ。舟で。一本釣りを、していた。父とは、違うんだけどね。おとうさん。

  「そんな、こまい、魚釣って。どうするんじゃ。」

  「逃がしてやれ。」

  「大けになって、戻って、くるけえ。」

  「海の、もん。全部、とったら。あかん。」って。

  逃がして、やってた。父、譲り。なのかしらねえ。

  「おかん。ボックスの、ガッチョ。元気に、泳いどるぞ。」いうてね。

   潮水を、換えて、やって。いるんだよね。次男が。

  まあ、ガッチョは。小さくても。あれが、おとな。なんだけどね。

  命の、あるものを。いただくん、だから。

   ボックスの、中とは、いえ。天寿を、全うして、もらってから。

   おいしく、いただいても。遅くは、ないしね。

  釣れることは。確かに。嬉しい、ことなんだけど。それよりも。

   魚にも。命があると、いうことを。

    忘れないように。しないと、いけないんだよね。

   「なんでも。とりゃ、ええもんと。違う。」って。

   おとうさんも。よく、言ってたものね。

     ねえ。おとうさん。