おとうさん。

   ラジオを、聞いていたら。おとうさんと、二人で、行った。

   あの、バスツアー。『立山黒部アルペンルート』の、話を、していてね。

    思わず、聞き入りましたよ。

   だって、ねえ。おとうさん。

    あの日と、同じ。富山側から、はいって。美女平から、室堂へと。聞けば。

    思いださない、訳には。いかないよねえ。おとうさん。

   「いつか。もう、一回。行きたいなあ。」って。言っててね。

   二度あることは。三度あるって、言うんだけど。

    こんど、行けてたら。おとうさんは。三度目なのに。

    行けず、じまいに。なって、しまってね。残念だよね。おとうさん。

   ダムの周りの、散歩も。そうだけど。二人で川湯に。足を、つけて。

    それから。トロッコ列車に、乗ってと。

    思い、だしたら。きりが、ないよねえ。おとうさん。

  あの日、二人で食べた。おやき、覚えてますか。おとうさん。

   「これが。おとうさん。おやき、いうんよ。」

   「いま。ブームに。なってる、やつやねん。」

   「なんや。テレビでも。よう。やってる。」

   「そうそう。旅番組で。よう。食べてる、やつ。」

    いうてね。

   ふたりで、アツアツを。ほうばったよねえ。おとうさん。

  きょうは。スーパーの。割り引きデイ、だったでしょう。

   たまたま買った、野沢菜。あれが、あるんですよ。

   ひさし振りに。作って、みましょうか。おとうさん。おやきをね。

  旅行から、帰ってから。『おやき。おやき。』と、はまってね。

   おとうさんに。練習台にも。なって、もらってね。

   随分、練習しましたから。味は。大丈夫かと、思うんですよね。

  「もう一回。いきたいのう。」との、思いは。

   叶わなかったん、だけどね。おとうさん。

  せめて、あの。楽しかった、思い出に。したりながら。

   おやきを。パクつきませんか。

   「フウ、フウ。」言いながら。アツアツをね。

     ねえ。おとうさん。