きょうの、昼は。春キャベツの。煮物を、しましたよ。おとうさん。

   煮物とは、おおげさで。ただ、うすあじで。煮つけた、だけですよ。

  おとうさんや、わたしの。子供の時は。

   ロールキャベツなんて。ハイカラな。料理は、なくてね。

   キャベツも。煮るのが、王道で。

   炒めて、もらえたら。ごちそう、だったんだよね。 

  久しぶりに、シンプルに、煮つけたら。

   甘味たっぷりの、春キャベツ。おいしかったですよ。おとうさん。

  そう、いえば。おとうさんは。

   なんでも。ウスターソースを。かけていたよねえ。

  春キャベツの、野菜炒めを、作って。

   せっかく、味を、ととのえて。

   「さあ、どうぞ。」と、だすと。

   「ああ。・・・・」と、思うまもなく。

    ウスターソースを、かけてねえ。

   「それじゃあ。味が、わからんやろに。」って。

   思うんだけどね。

   「うまい。うまい。」だものね。

  いなかは。なんでも。炊くか。焼くかでねえ。

  特に、子供のころは。

   炒めるのにも。油が、いったから。今では。笑い話に、なるんだけれど。

   キャベツ炒めは。高級料理と、までは。いかないまでも。

    なかなか。食べられな、かったんだよね。

   もちろん。香辛料なるものは。なかったから。

   ただ、炒めたものに。

    ウスターソースを、かけて。食べて、いたんだけどね。

  それで。むかしの、くせで。ついつい。

   なんでも。ウスターソースを、かけるように。

    なったんだと、思うんだけどね。おとうさんは。

  カレーだって。

   子供の頃。食べる時に。

    ウスターソースを、かけて。

     味を。ととのえて、いたのが。忘れられなくてね。

   いまでも。つい。ウスターソースを、かけるんだよね。

   「なんで、ソースかけるんよ。」いうたら。

   「わしの、友達なあ。」

   「カレー、いうたら。醬油を、かけるんじゃ。」いうてね。

   訳の、分からない。言い訳を。してね。

  むかしは。いまのような、カレールーじゃ、なかったし。

   おまけに。どういう訳か。

   たっぷり、水のはいった。シャブシャブの、カレー。だったんだものね。

   だから。ウスターソースを、かけて。食べるのが。

    あたりまえ。だったんだ、けどね。

  『三つ子の魂百まで』とは、よく、言ったもので。

   あんなに。味に、うるさい。おとうさん、だったのに。ねえ。

    あの、ウスターソース、だけはねえ。

      ねえ。おとうさん、