おとうさん。おはよう。

  おとうさんが、いないと。朝は。

   ついつい、パンに。なって、しまうんだけどね。

   きょうは。ナスの味噌汁に、しましたよ。おとうさん。

  子供の時は。夏にしか。食べられ、なかったのにね。

   喜ぶ、べきなんだけど。

   季節が。どこかに、行っちゃった。みたいだよね。おとうさん。

  仕事から、離れると。外に出ることも、少なくなって。

   季節を。感じることも。少なくなるので。

   「おとうさん。行こうよ。」って。

   二人で。ミニドライブに、出ることも。よくしたよねえ。おとうさん。

   たいてい。行く、方向は。決まって、いたんだけどね。

   まだ。田畑の、残っている。道を、通って。

    ダム湖に、行くことが。多かったよね。

  でも、この季節は。ロープウエイのある。あの、山だよね。

   正確には、山近く。山の近くの、田んぼ。

   レンゲ畑を。見に、行くんだよね。

  田舎は。麦は、作ってたけど。イネは、なかったものね。

   だから。こっちに、来るまで。ほんものの。

    レンゲ畑どころか。本物の、レンゲを。

     見ることも。なかったんだ、ものね。おとうさん。

   「おとうさん。レンゲやわ。」

   「レンゲ畑、やで。」

   「きれいやねえ。」いうて。

   わたしが、喜ぶ、ものだから。

  この、季節。何回か。あそこまで、行ったよねえ。おとうさん。 

   時に。少し。いただいて、帰ることも。あったけどね。

  『やはり、野に置け。レンゲソウ。』って。

   手に、とると。やっぱり、ダメなんだよね。

  そういえば。おとうさん。

   奈良の、何とかの里も。二人で。歩いたよねえ。

   「おまえが。レンゲ、レンゲ。いうからなあ。」いうてね。

   途中で、おとうさんの、好きな。ソフトクリームを、買ってね。

  近頃は。どこも、かしこも。宅地になって。

   レンゲ畑を、探すのは。大変なんだけど。

  今日は、天気も、いいことだし。久しぶりに。ねえ、おようさん。

   行って、みましょうか。

   二人で、よく、行っていた。あの、レンゲ畑にね。

   ことしも、見れると、いいのにね。

     ねえ。おとうさん。