おとうさん。新学期が、始まったよね。

  我が家の。新学期と、言えば。

   「タイの、お頭つきに。お赤飯。」が。定番、だったよねえ。

  おとうさんが、元気だったころは。この日の、為に。

   タイを、求めて。ふたりで。

   あっち、こっちに。買い出しに。行った、もんだよね。

  そして。お赤飯を、たくさん作って。ご近所さんに、くばってね。

   なつかしいよ、ねえ。おとうさん。

  おとうさんや、わたしの。子供の頃はね。

   田舎の、新学期は。先生の。入れ替わりの、日でも。あったんだよね。

   「うちの、中学校も、小学校もなあ。」

   「転校した、先生が。新学期、始めに。もう一回、やって来てなあ。」

   「みんな、一斉に。船で、帰ったんじゃ。」

   「わしらは、みんな。学校から。みおくりに。行ったんじゃ。」

   「あの。赤や、青の。紙の、テープ。」

   「みおくりテープが。持ちとうてのう。」

   「はい。はい。はい。いうて。争奪戦じゃった。」

   「数が、限られとったけのう。」

   「せっかく。持たしてくたと、思うて。喜んだら。」

   「わしの。好きな、先生の、テープでは。なかったんじゃ。」

   「自分で、選ばれんけのう。」って。

   たった、一回。テープの、端を。

    持つことが、できた時の話を。してたことが、あったよねえ。

  いま、思いだせば。笑って、しまうんだけどね。

   あの、テープの、争奪戦は。すごかったよねえ。おとうさん。

   私たち。子どもに、とっては。必死だったん、だけどね。

  近頃は。過疎化も、進み。学校も。少なく、なったり。

   環境問題にも、はいりょしたりと。

   なにより。あれが、当たると。危ないとかで。

   あの、一大イベントも。見られなく、なって。しまったん、だけどね。

  田舎で、育った。おとうさんや。わたしに、とっては。

   新学期と、言えば。『あの、イベント』と、いうくらい。

  なんといっても。あの、『別れの、テープ』は。

   この、時期の。懐かしい。

   一大、イベント。だったんだよね。

     ねえ。おとうさん。