おとうさん。おはよう。

  ウサギと、カメじゃあ、ないけれど。

   これは、寝すぎた。しくじった、ってね。言いたいぐらい。

   グッスリ、こんこんですよ。

  外は、大雨でねえ。

   こんな日は。そとで、仕事をする人は。ほんとに、大変だよね。

  おとうさんは。わたしの、することには。ほとんど、なんでも。

   「好きなように、せえ。」いうてね、

   やりやいほうだい。したいほうだい。自由に、させて。くれていたのにね。

  アルバイトに、だけは。口を挟んで、ねえ。

   「中、仕事に。せえ。」

   「お前には。外での、仕事は。できん。」いうてね。

   できる、できないで。よく、もめたよねえ。おとうさん。

  仕事に。差別は、ないけれど。

   おとうさんの、『反対』には。

    おとうさん、なりの。『優しさ』が、あったんだよねえ。

  「わしは。新聞屋に、住み込みで。学校に、行っとったんじゃ。」

   夜間高校を、転校して。田舎に。帰っていた、時だよね。

   なんこも。アルバイトを。掛け持ち、していた。そのうちの、一つに。

   新聞配達も、あったんだよね。

  「雨の、日には。大変で、のう。」

  「濡れんように。透明の。袋に、入れて。配るんじゃ。」

  「そじゃけど。大雨の時は。時々、濡れとる時も、あるんじゃ。」

  「あとから。あやまりに、いかんと、あかんのんじゃ。」

  「次の、バイトには。行かれんように、なるし。」

  「寝る間も、のうなるし。」

  「おまけに。おこられるし、のう。」ってね。

  高校時代の、ことを。思い出しては。

   「あかん。おまえには。無理や。」いうてね。

   反対して、いたんだよねえ。

  おとうさんの、気持ちが。分かったのは。

   ひと年とって。福祉の、仕事に。ついて、からだよね。

   雪が、降ろうが。雨が、降ろうが。カッパを、着て。だものね。

   いま。思えば。好きな、仕事とはいえ。ほんと。大変だったものね。

  いつも、減らず口を、たたいて、いたのに。家に、帰ると。

   「きょうは。大変やったのう。」いうて、くれてね。

  外の。大雨を、見てると。

   あの、日のことを。思い出して。また、涙。ですよ。おとうさん。

   おとうさんらしい、優しさを。おもいだしてね。

    ねえ、おとうさん。