おとうさん。おはよう。

  『三日坊主』とは、私のことなのに、ねえ。おとうさん。

  『ことしは。スケジュール帳、書くぞ。』と、決めても。

   せいぜい、一二ヶ月。

  日記帳なんかは。もっと、ひどいよねえ。おとうさん。

  ほんと。今年は、書こうと。志たかくって、思うんだけど。

   気が付けば。中は、真っ白で。ねえ。

  それなのに。

   おとうさんが。入院してからの、日記。

   『おとうさんの、病状日記』は。

   なんで。あんなに。くわしく。書けたんやろね。おとうさん。

   毎日、毎日。病院での、出来事を。一つたりとも、漏らさぬように。

    そう。思って、いたてた訳では。ないんだけれど。

    でも。結果的に。そうなってね。おとうさん、

   おとうさんが、元気に、なったら。

   「おとうさん。よう、頑張ったやん。」

   「あんなに。大変、やったのに。」いうてね。

   日記帳を、見ながら。ふたりで、笑えるって。思って、いたんだよ。

   「あんな、ことも。あったよねえ。おとうさん。」いうて。

  それなのに。一ページ目から、涙で。読めないよ。おとうさん。

   『この、時。なんで。なんで。』ってね。

   もう少し、できること。あったんじゃあ、ないかって。

  すこし、あの時より。今は。冷静に、向き合える分。

   それだけに。かえって。思って、しまうんだよね。

   『なんで。気が、付かん。かったんやろ。』

   『もっと。どうして。この時に。』ってね。

   人の、命は。神様の。手の中に、あって。

    どうにも。ならない、ものなんだと、いわれれば。

   かっこよく。「そうやねえ。」って。

    いうんだ、けれど。ねえ。おとうさん。

  やっぱり、心の、どこかで。まだまだ、納得できない。私が、いてね。

  あの、日記は。

   おとうさんとの、大切な。

   思い出の。日記には、違いないんだけどね。

   詳しく、書いてれば。書いてる分だけ。かなしいよねえ、おとうさん。

  こんな。ことなら。

  三日坊主の、私らしく。いつものように。

   チャランポランタンに。書いておけば、よかったのかな。おとうさん。

   「いつもの、おまえ、らしいなあ。」って。

    おとうさんと、いっしょに。笑えるようなね。

   思い出が、無いのも。悲しいけれど。

   思い出が。あるのは。もっと。悲しい、ものなんだよね。

    ねえ。おとうさん。