おとうさん、おはよう。

  きょうは。またまた、雨だよ。こんなに。コロコロ、変わるとね。

   『何とか、心と。秋の空』と、言うんだけれど。

   これじゃあ。『春の空』と、いいたいよねえ。

   おまけに。カミナリ、ゴロゴロってね。

   せっかく。咲き始めた、サクラも。かわいそうだよね。

   「私は、どうしたら、・・・」って。

    咲いて、いいやら。わるいやら。とまどって、しまうよね。おとうさん。

  「こどもん時は。わしは。カミナリが、きらいでのう。」

  「蚊帳の。中に、入って。」

  「ドンドロさん。はよ、行ってくれ。いうとった、もんじゃ。」ってね。

   いってたけどね。おとうさん。

   田舎では。カミナリが、なると。

    子どもは。みんな。蚊帳の、中。だったん、だよね。

   これは。昔からの。親の、知恵。だったのかも。しれないよねえ。

   カミナリが。鳴って、いる時に。子供が。外に、出ないようにってね。

  私たちが、小さいときは。

   目が覚めた、頃には。親は。仕事に、出ていてね。

   大きい子が、小さい子の。めんどうを、見るのが。あたりまえで。

   でも。なかなか。言うことを。聞いて、くれないんだよね。

  「こうしたほうが、ええぞ。いうても。」

  「うちは。男、ばっかりやけえ。」

  「いっこも。聞いて、くれん。かったんじゃ。」

  「それで。よう、けんか、しとったわ。」いうて。

   おとうさんも。よく、言ってたものね。

  だから。外で、遊んでいて。カミナリが、鳴りだしたら。

   危ないから。家の、中に。入るようにってね。

   そういう、ことだと。思うんだよね。

  あれは。おとなの、知恵。だったんだよね。

  カミナリのことを、田舎では。ドンドロさんて。言って、いたんだけど。

   「ドンドロさんに。ヘソを、取られとう。なかったら。」

   「蚊帳の、中に、入っとけ。」って。 

   いわれて。いたんだものね。おとうさん。

  いまの、子供たちに、言うと。笑われるかも。知れないん、だけどね。

   「ドンドロさんやで。」

   「ヘソ、取られるで。」ってね。

   蚊帳の、中に。かけ込んで。ワアワアやって、いたんだよね。

    あれは。あれで。よき、時代。だったよね。おとうさん。

   蚊帳の中で。遊ぶのも。

    けっこう。楽しい、ものだったん。だものね。子供に、とっては。

     ねえ。おとうさん。