おとうさん。

  洗たく物を。干そうと、思って。ベランダに、出たら。

   きれいな、飛行機雲が。目の前を。一直線に。伸びて、いくんだよ。

   『あの、雲に。乗って、行けたら、ええなあ。』

   『どこまで、いけるんやろ。』

    そう思って、見ていたら。

    反対、がわから。もう一つ。飛行機雲が、やって来てね。

   『わあっ。』って、言うてる間に。

    左と、右に。泣きわ別れ。すれ違いだよ。

   あとに。残ったのは。二本の、白い線だけ。

  人の、出会いも。あんなものかも、しれないよね。

   ちょっとした、きっかけで。出会えたり、すれ違ったりね。

   「ああ・・・・」って。言ってる、うちに。

    行き違い。すれ違いに。なって、しまうんだよね。

  それなのに、ねえ。おとうさん。おとうさんと、わたし。

   思い返せば。ほんと、不思議だよね。

   顔も。名前も。知らない、者どうしが。

    よくぞ。あの、ホームの上で。出会えた、もんだよね。

    決まって、いたのは。

    『何時に。ホームで、待ち合わせ。』と、言うことだけ。

    だったんだ、ものね。おとうさん。

  それこそ。ケータイ電話も。無い時代、だったんだもの。

   なにか。ちょっとした、ことが。起これば。まったく。連絡の、つかない。

   そんな。時代、だったんだものね。

  おまけに。あの時。おとうさんは。ホームに、いないで。

   駅の。案内版の、所で。道案内を。してあげて、いたんだものね。

   お互い。すれ違って、いても。あたり前。だったん、だものね。

   きょうの。あの。飛行機雲の、ようにね。

    近くに、いても。すれ違いってね。

  それがねえ。私は、こうして。ここに、いるんだもんね。

   おとうさんと、夫婦に、なって。息子たちに、囲まれて。

  『縁は、異なもの。味なもの』って、言うんだろうけど。

  『縁は、異なもの。不思議なもの』って、いいたいよねえ。おとうさん。

   『人の、えにし』とは。ほんと。まか、不思議なもの、だよね。

    ねえ。おとうさん。