おとうさん。おはよう。

  きょうも、さむいよねえ。

  『おかん。風が、強いで。気いつけや。』と。

   長男からの、メールが、あれば。

  今度は。

   「おかん。こっちは。雪が、降ってきたで。」

   「ちゃんと。ストーブ。つけんと、あかんで。」と。次男からの、電話。

  二人とも。自分たちの、ことも。忙しいのに。

   私の、ことまで。心配してくれて。

    ほんと、ありがたいよねえ。おとうさん。

  世の中。どっちも、いいことって。そんなに。あるものじゃあ、ないよねえ。

   物事、表裏一体ってね。

   寒いぶん。花は。長持ち、するんだものね。

   せっかく。お墓に、立てた。お彼岸の、お花。

    この、雨で。いまごろ。お水、すってるよね。

   そう、思うと。悪いこと、ばかりじゃ。ないんだよね。

    ありがたい、ことも。あるんだよね。

    なんでも。ものは。考えようだよね。おとうさん。

  そういえば。おとうさん。昔、ムセンに。凝ったこと。あったんだよね。

   「おとうさん。きょう。仕事に、行ったらなあ。」

   「仕事先の、山の上に。おおきな、アンテナが、あったんよ。」いうたら。

   「それは。ムセンやろ。」いうてね。

    いろいろ、教えて、くれたよね。ムセンの、こと。

   「田舎は、なあ。むかしは。電話の、とこに。交換手が、おったんじゃ。」

   「よう。電話線が、切れたじゃろう。台風の、時は。」

   「それで。ムセン機も、あったんじゃ。」いうてね。

    おとうさん地は。わたしの、実家よりも。

     もっと。不便な、場所に。あったん、だものね。

   「今、覚えとるんは。トン、トン、トン。ツー、ツー、ツー。」

   「トン、トン、トン。と、やる。」

   「あの。信号だけや、けどな。」って。はなして、くれたんだよね。

   不便ゆえに、おとうさんが、覚えた、あの信号。

    なにか、あったら。わたし、使うよね。

   せっかく。おとうさんに。教えて、もらったんだもの。

    『たすけて、くださいってね。』

    『トン、トン、トン。ツー、ツー、ツー。トン、トン、トン。』てね。

       ねえ。おとうさん。