おとうさん。きょうは。朝から、忙しいからね。

   ゆでタマゴは、時間短縮で。ストーブで、しようと。思ってね。

   鍋に。タマゴを、入れて。ストーブに。かけて、おいたんだけどね。

   朝食の時。さあ、食べようと、思ったら。

   「なんや、これは。」いうてね。長男が、いうんだよ。

   見たら、ビックリ。

   『ゆでタマゴ』では。なくて。『温泉タマゴ』に、なっていたん、だよね。

   せっかく、いいアイデアやと、思うたのに。残念なこと。

  ところがね。おとうさん。

   帰りの。車の、中で。

   「おかん。お昼は。なにが、いい。」って、いうから。

   「そうやねえ。やすいもので、いいよ。」いうたらね。

   「ほんなら。あれに、するか。」

   「時間の、都合も、あるし。」言うてね。

   あそこの、持ち帰り、うどんに。なったんだよね。

   「おとんが。入院、してたとき。よう、買うて、帰ったよなあ。」

   「おとんの、病状経過を、聞く日は。いっつも、おそうなって。」

   「もう。晩飯。買うて、帰ろう。言うてな。」って。

   あの日の。思い出話を、しながらね。

    あの、持ち帰り、うどんに、したんだよ。おとうさん。

   そしたら。次男が。

   「そういやあ。温玉うどん。いうのが、あるやん。にい。」ってね。

   「ある、ある。トッピングに、あるわ。」

   「ほんなら。この、持ち帰り、うどんに。」

   「おかんの、『温泉タマゴ』を。トッピングしたら、ええで。」いうてね。

   いつも。買ってた。あの。持ち帰りの、うどん。買ってきてね。

    朝の、ゆでタマゴ、ならぬ。温泉タマゴを。トッピング、したんだよね。

   そしたら。思いも、かけないこと。

   「おかん。ビンゴや。うまいわ。」

   「ほんまや、なあ。うまいなあ。」いうてね。

   失敗作だと、思ってた。ゆで卵がね。

    おいしい。『温玉うどん』に。なったんだよね。

   きょうは、ねえ。ゆでタマゴの、失敗が。

    思わぬ。おとうさんとの、思い出話に。つながって。

    おいしい。『温玉うどん』に、かわってね。

   こういうの。お彼岸の。お墓参りの、ご利益って、いうのかな。

     ねえ。おとうさん。