おとうさん。おはよう。

  きのうはね。久しぶりに。夜の、ドライブ。したよ。

   心配してたけど。息子たち。交代で、運転してくれてね。

    始発の、便に。間に合ったよ。

  あしたから。お彼岸の、入りでしょう。

   始発の便は、いっぱい。乗れて、よかったよ。

  おとうさんと、二人で。何回、こうやって。帰って、きた。ことだろうね。

   夜中に、走るのは、あたりまえでね。

  「おとうさん。何時に、出る。」って。聞いたら。

  「夜中やな。用意しとけや。」いうて。

  仕事帰りに。すぐに。田舎に、向けて。帰ったことも。あったんだものね。

  思い返すと。随分、無理していたん、だよね。おとうさんは。

   『いまごろになって、知る。おとうさんの、ありがたさ。』ってね。

   「ずいぶん、遅いぞ。」

   「いまごろに、なって。わしの、ありがたさが。分かったんか。」って。

    どっかから。声が。とんで、きそうだよね。

  きょうは。とっても、いい天気。

   「わあ。おかん。まぶしいなあ。」

   「きれいやなあ。」いうてね。

   向こうでは、見られないような。きれいな。朝日にも、出会えたし。

  なんと、言っても。きょうの。メインの、お客様は。

   『カモメ』ですよ。おとうさん。

  あの、曲がり角の。岸壁に、いてね。

   「よう、帰って、きたのう。」

   「ご苦労さん。」って、いってくれてる、みたいにね。

   じっと。こっちを、みながら。動かないんだよね。

  わたしも、思わず。

   「帰って、きましたよ。今年もね。」って。声を、かけましたよ。

  ああやって。みんなで。出迎えて、くれるんだもの。

   うれしいよねえ。おとうさん。

   正直。帰ってくるのは、大変だけど

    こうやって、帰れることの、ありがたさってね。

   なにより。元気で、あればこそ。できること、なんだもの。

   そして。息子たちの、協力が。あればこそ、だものね。

   お彼岸に、帰れたことに。感謝、感謝だよね。おとうさん。

    気が、つくのが。ちょっと、遅いんだけどね。

    「おとうさん。いつも、ありがとう。ご苦労さまでした。」って。

    感謝状でも、おくりたい。気分ですよ。おとうさんにね。

     ねえ。おとうさん。