おとうさん。おはよう。
三月も、折り返し。はやいよねえ。
きょうも。濃霧注意報が、出ているよ。田舎では。この季節。
濃霧には。よく。悩まされて、いたものだよね。
朝起きて。
『ピンポン、パン。」と。山の上に、設置されてる。拡声器がなると。
「朝の、便は。無理やで。」ってね。足止めだったん、だよね。
子供の時はね。次の日が。休みになるか、ならないかは。大事件。
「あしたは。霧が、でそうやで。」って、いう。
おとなの、話を。小耳に、はさむと。
「やったあ、休や。」いうてね。
心ひそかに。『ピンポン、パン』を。期待、したものだよね。
それが、ねえ。こっちに、住むようになると。
「おとうさん。あしたは。どうやろう。」
「せっかく。たどり着いても。足止めでは、なあ。」
「まあ。行くだけ。行ってからや。」言うてね。
星空の、中を。田舎に、向かって。走ったものだよね。
「お彼岸は。無理やで。」いうて、いたのにね。
「とんぼがえりでも、ええか。」いうてね。
やっぱり。みんなで、帰るように。なったんだよね。
お彼岸に。お墓まいりが、できるのは。やっぱり、いいよねえ。
せっかく。あそこまで。たどり着いたら。
『足止めです』って、ことに。ならないように。祈りたいよね。おとうさん。
いつだったか。おとうさん。山の、中で。立ち往生して、こまったよねえ。
一寸先は闇では、なくて。一寸先も、霧ってね。笑えない、話。
あの時は。結局。回り道、したものね。
もし。あの時の、ように。なったらね。おとうさん。
「こっちの道も、あるぞ。」いうてね。
また。いつものように。道しるべを。示してよね。おとうさん。
きのう、久々に。星空を、眺めてたら。
あの、『スバル』が、見えたよ。おとうさん。
もし、息子たとが。立ち往生したら。星空を、見上げるからね。
「こっちの、道も、あるぞ。」ってね。
息子たちが、困らないように。してあげてよね。
せっかく。お彼岸に。帰って、くれるんだものね。
ねえ。おとうさん。