日本は。四季が、あるから。美しい。
いい国だって。言われるん、だけどね。
今年も。桜の、季節が。やって、来ましたよ。
桜の、開花予想が、でましたよ。おとうさん。
喜ぶべきか、悲しむべきか。複雑だよね。
人って、随分、勝手なものだと。自分でも、思うんだけどねえ。
子どもの。入学式の、時なんかはね。
「写真とるなら。ここが、ええで。」言うてね。
わざわざ。桜の木の、下に。行ってね。記念写真とって、いたのにね。
今。桜と、言うと。
「やめて。桜の、はなしは。」って。
こころの、どこかで。言ってる。自分が、いるんだよね。
やっぱり、思いだすのは。
桜吹雪の、中で。病院に。駆け込んだ、日のことをね。
思いだして、しまうんだものね。おとうさん。
あの時。「ただの、腹痛だよ。」って。
いわれた、言葉が。本当だったら。どんなに。よかった、だろうにねえ。
いまだって。そう、思っているよ。おとうさん。
そういえば。『虫の知らせ』って。言うんで、しょうかねえ。おとうさん。
入院前に。あの、池のまわり。
よく、行きましたよねえ。二人で。
近くに。用事があると。
「おとうさん。ついでに。あっちも、回ろうよ。」って。
無理いうてね。行ったんだよね。
「ここの、桜の、木の、下で。よう、花見したのう。」
「あそこの、池んとこで。弁当食べて。」
「写真、とってたのも。いっつも、ここやで。おとうさん。」いうてね。
それから。
最初に、住んでいた。団地の、前に行って。
こっちに、引っ越す前の。あの、団地の、ところへもね。
おとうさに、とって。
あそこの、桜。あの時が。見納めに、なると。分かっていたなら。
「もう一回。まわろうか。おとうさん。」いうてね。
何回でも、池の周り。回れば、よかったよね。おとうさん。
「また。つぎの時。」そう、思って、いたんだもんね。
「散る桜。残る桜も、散る桜。」ってね。よく。言った、ものだよね。
限りある、命だってこと。ついつい。忘れて、いたんだものね。
あの時は。 ねえ。おとうさん。