おとうさん。おはよう。

  暑かったり、寒かったり。こんなの。

   三寒四温て、いうんでしょうか、ねえ。おとうさん。

   天気は。ええ加減。ほんと、気まぐれだよねえ。

  天気と、同じで。わたしは、ええかげん。『なんでも、ええ人。』なのに。

   おとうさんは。なんでも、こだわりの、人でねえ。

  わたしが、こっちに、来たときは。

   「この、メーカーが、じょうぶで、品物が、ええ。」言うて。

   下着まで。こだわって、いてね。

   「トニックは、これが、ええんじゃ。」

   「ひげそりシャンプーは、これがええ。」

   日本酒だって。ウイスキー、だって。数えだしたら、きりないよね。

   それも。

   「これ、買うわ。」と。その、時の。値段に、関係なし。

   「おとうさんは。ほんまに。ザルのような、人やわ。」ってね。

    よく。いってた、もんだよねえ。

  それが、いつのまにか。

   「これ、バーゲンなんやけど。」

   「あしたは。値引きセールが、あるんよ。」

   「それまで、まって。」て、いうと。

   「値引、されていても。品物には、かわらん。」言うてね。

   そんな、人に。なって、いたよねえ。

  そうそう。クラブに、行ってね。

   「わし。焼酎が好きでなあ。いっぺんに。何本も、買うんや。いうて。」

   「あの、おっさん。言うから。」

   「わし。安いとこ、見つけたんや。いうてな。」

   「こないだ。教えて、やったら。喜んどったわ。」

   「散髪、行きたいけど。言うて、いうから。」

   「わしが、行っとるとこ。安いで。」

   「年齢割引も、きくんやで。言うたら。」

   「みんな。行って、来たで。いうとったわ。」ってね。

  いつの間にか。ガソリンスタンド、までね。

   「あそこが。一番、安いんじゃ。」いうてね。

   わたし、以上に。安売り、情報を。持って、いたよねえ。おとうさんは。

  まあ。夫婦は。似てくるとは。いうんだ、けれど。

   だんだん。わたしに。感化されて、きたのかな。

  でもね。笑えるんだけど。散髪だけは、ねえ。

   「髪の毛が、伸びると。気になって。」いうてね。

   「その、頭の。どこを、切るんよ。」って。

   わたしに、言われながらも。毎月の、ごとく。行って、いたよねえ。

  入退院の、合間でも。

   「しんどいのに。やめといて。」いうても。

  一番に、行くところは。散髪屋さん、だものねえ。

   『三つ子の魂百まで』とは、よく言ったもので。

   やっぱり、変わらないもん、なんだよね。

    ねえ。おとうさん。