おとうさん。たいへんだよ。

  あの。階段横の、『ふようの木』。切られる、みたいだよ。

   ピンクの、テープ。巻かれて、いたから。ビックリしたよ。

   あんなに、きれいな、花を。咲かせて、いたのにね。

    今年は。もう。見れないん、だよね。悲しいよねえ。

   近ければ。『ください』って。もらって。返りたいよ。田舎にね。

   こんな、時。おとうさんが、いたらなあって。思って、しまうよね。

  「この木。邪魔になるから、いらんか。言われたんじゃ。」いうて。

   おとうさんが、もらって、きてくれた。木ばかりだものね。

    我が家の、ベランダの木は。みんな。

   我が家に、来ると。みんな。元気に、なってね。大きく、なるんだよね。

    大きく、なり過ぎた木は。

     おとうさんが。田舎に、持って帰って。くれていたんだ、ものね。

   近所の人に。

   「べランダで。そんなに、大きくして。どないするん。」て。

   言われながらも。花が咲くと。

   「きれいやねえ。」って。いって、もらえるのが、嬉しくて、ねえ。

   「ほら。今年も。もろうて、来てやったで。」言うてね。

   いつも、あの。肥料を。もらって。来てくれて。

  我が家に、来た。里子の、鳥たち同様に。

   大事に。育てて、いたんだものね。おとうさん。

  「これは。ビルの、オーナーが。世話できんように、なったんや。」いうて。

   枯れかかった、花月。別名、『金のなる木』を。持って帰った、時は。

    小さな、小さな、鉢だったのに。いまでは。大木に、なってねえ。

    かわいい、花を。見せて、くれるように、なったんだよね。

    小鳥も。時々。遊びに、くるんだよね。おとうさん。

  ツバキだって。月桂樹だって。小さな、小さな、鉢から。

   二人で。育てたんだ、ものね。おとうさん。

  「いらない、ものなら。もらいますよ。」って。

   言うのが。おとうさんの、口癖で。

   なんで、あろうと。どうにか、できるならば。できる限りの、ことを。

    それが。おとうさん。だったんだ、ものね。

  今では。反対に。

   しっかり、恩返しを。してもらって、ますよね。あの、木たちには。

   感謝、しないと、いけないのは。私たちかも、しれませんよね。おとうさん。

   ベランダで。季節の、花が。楽しめるん、ですものね。

   それに、小鳥たちも、やってきて。

   台所で。お茶を、飲みながら。こんな、贅沢なこと。できるんですものね。

    そうでしょう。 ねえ、おとさん。