おとうさん。きょうは、どこに行っても。おひな様。おひな様ってね。

  お菓子コーナーの、ケーキも。お惣菜コーナーも。

   特に、お寿司コーナーはね。大変な、にぎわいですよ。

  わたしは。きょうは。さてさて、どうしましょうかと、考えて。

   おとうさんが、いれば。バラ寿司ですかねえ。

  そう、言えば。妹が。

   「ねえちゃん。お昼。バラ寿司、作ったよ。」って。

   電話で。言って、いたよねえ。おとうさん。

  わたしは。きょうは。赤カブ漬けを。買って、きたんですよ。

  おとうさんが、元気だった頃は。

   仲良しの。クラブの、仲間に。よく、もらって来てね。

   「おとうさん。じょうずに、つけたやろ。」って。

   赤カブ漬け、作っては。自慢して、いたのにね。

   近頃、赤かぶ。ちっとも。見かけ。ないんだもの。

    思わず。買って、しまいましたよ。

  それで、ねえ。おとうさん。

  今日は。『ちらし寿司』と、言いたい、ところですが。

   ちらし寿司は。子供たちと。一緒の時と、言うことで。お預けにして。

  きょうは。あれを。作ろうと、思うんですよ。

   赤かぶで。お寿司をね。

   おめでたい、お節句ですから。赤い色で。いいでしょう。

   ゴマ入りの。すし飯を、作ってね。ピンポン玉の、ように。まるめて。

    スライスした。赤かぶ漬けを、のせてね。

   そうそう。田舎から、持って来た。あの、キンカン。

    皮を。千切りに、して。少し、上に、かざりましょうか。

   見栄えも、きれいだし。味にも。少し、アクセントが、あって。

    いいと、思うでしょ。ねえ。おとうさん。

  忘れてませんよ。おとうさんの、好きな。『かぶら寿司』は、ねえ。

   ちょっと、手抜きして。甘酒こうじで。作りますからね。

   一日。待って、くださいね。

    あさりの、しぐれ煮と。一緒に。おさけの、あてに。しますからね。

   どうですか。おとうさん。

    私たち、らしい。ごちそうに、なったとは、思いませんか。

   二人で。おひな様を、祝うには。これで。じゅうぶん、でしょう。

     そう、思うでしょ。おとうさんも。

      ねえ。おとうさん。