『なくて、七癖。あって、四十八癖』って。

  よく。言われるんだ、けどね。

  誰でも。いろんな癖を。持って、いるんだけどね。おとうさん。

  おとうさんの、あの、癖には。みんな。なやまされたん、だよね。

  おとうさんは。昔から、車の、外に。ポイ捨てする、人が。大嫌いでね。

   もちろん、車の、中にもね。

   それは、いいんだけどね。おとうさん。

  おとうさんは。チェンジの、横に。古い、レジ袋を。つるしてね。

   その中に。ポイポイ、ゴミを、入れて、いたんだよね。

   「やめて。くれる。おとうさん。」

   「運転するのに、じゃまなんよ。」言うてね。

   何度、言っても。無駄でね。

   わたしが、運転する時は。だまって、はずして、

    横に。置いて、いたんだよね。袋はね。

    それなのに。気が付いたら。また。ぶらさげて、いたんだよね。

   「せっかく、外しとったのに。また、つけて。」って。文句を、言うと。

   「なにが。じゃまや。」言うて。

   反対に。怒って、いたんだよね。

  おかしな、もので。あんなに。文句を。言って、いたのにね。

   車にのると。ぶらさげて、いるんだよね。あの袋。

   息子たちがね。おとうさんと、同じように。してるんだよね。

   おかしいよねえ。笑うでしょ。おとうさん。

  癖も、そうだけど。食べ物の、好き嫌いだって。

   不思議と。だんだん。よく似て、くるんだよね。

  あの、ピーマン。だって。そうだよねえ。

   わたしたちが、若いころから。お世話に、なっていた。

    知り合いの。あの、先生。大の、ピーマン嫌いでね。

   どうにか、食べさせて、あげようと。思って。

   いつだったか。

    みじん切りにした。ピーマンを。入れた。チャーハンを。作ったら。

    手も、つけないんだ、ものね。あれには。がっかり、したよねえ。

    ほんの、少し。分からない、程度に。いれたのに、ねえ。

  我が家の、息子たちは。反対に、おとうさん似でね。

   あの、ピーマン。大好き、なんだよね。

  そうやわ。おとうさん。きょうは。あれを、つくりましょうか。

   ピーマンの、煮びたしを。

    火を、止めてから。かつお節を、たっぷり入れて。

    お酒の、あてにも。いいもんね。おとうさん。

  きょうは。夜から。寒くなると、いうから。ちょうど、いいかもね。

   おとうさんの。お酒の、あてにはね。

    ねえ。おとうさん。