おとうさん。おはよう。

  今年は。四年に、一度の。うるう年。一日、得した気分だね。

   もったい、ないから。この。得した、一日を。

    どう、つかおうかなあ。おとうさん。

   普段と、違い。『思う存分、昼寝を、するとか。』

   そんな、ことが。できたら、いいのにね。笑えるけどね。

   わたしの、ことだから。お昼に、なったら。

    スーパーで。『きょうの、目玉商品は』って。いつもの、ように。

     やってるかもね。おとうさん。

   おなじ、買い出しなら。遠出が、したいよねえ。

  「おとうさん。行こうよ。」って、言えば。

   いつだって。二つ返事で。

   「ああ、いいよ。」だったのにねえ。

   やっぱり、おとうさんが、いないと。なかなか、出れないよ。

  この間。息子たち、いうんだよね。

   「あの。おかんの、干物。食べたいよなあ。」ってね。

   おとうさんの、大好きな。カレイの、干物だよね。

    軽く、あぶって。身を、とって。マヨネーズでね。

  「そうや。おかん。」

  「おかんが、はじめて。おとんの、とこに。来た時。」

  「部屋の、台所に。針金が。張って、あって。」

  「いっぱい。カレイが。つるして、あったって。」

  「なんも、なかったけど。」

  「カレイと、カンヅメだけは。あったって、はなし。」

  「よう、聞かされたなあ。」って。

  二人が、思いで、話に。花を、さかせながら。

   食べたい、食べたいってね。言うんだよね。おとうさん。

 「おとうさん。かぞえたら。小さいけど。四十ちかく、あるよ。」って。

  たくさん買って、来てね。

  「エラの、とこから。内臓とって。」

  「きれいに、処理したら。塩水に、つけて。」言うて。

  おとうさんに、教えて、もらってね。

  「ここは。干すとこ。ないよ。」いうて。

   苦肉の策に、考えだしたのが。ハンガーに。つるすことで、ねえ。

  「おとうさん。わたしも。なかなか、やるじゃろう。」いうて。

   おとうさんに、自慢したら。

   ニコニコ、笑っていた。おとうさんの、あの笑顔。

    思いだしたら。なぜだか。涙が、でるよ。おとうさん。

  一生懸命に、作ってね。

   「うまく。できたやろ。おとうさん。食べて、みて。」って。

    あじみして、もらってね。

   「じょうできや。うまいわ。」

   「もう、一枚、あぶろうか。」いうたら。

   「この、続きは。あれらが、帰って、来てからや。」いうてね。

   息子たちと、いっよに。食べてね。

   「もって、帰れ。持って、帰れ。」って。

   息子たちが、喜んで。

    持って、かえるのを。見るのが。楽しみ、だったんだよね。

  たまには。一人で。遠出と、いきますか。おとうさん。

   せっかく。よぶんに、ある。一日なんだもの。

   もしかしたら。欲しいものが。見つかるかも、しれないしね。

    ねえ、おとうさん。