おとうさん。おはよう。

  きょうは。天気が、いいようだから。二ヶ月ぶりに。住宅の、掃除だよ。

  子供の時は。なにを、やるにも。天気が、気になってね。

   晴れに、なって、ほしい時は。

   『てるてる坊主』を、つくって、窓の、ところに、つるしてね。

   「天気に、なあれ。天気に、なあれ。」って、よくやってたよねえ。

  いつだったか。

   「おとうさん。こんなに、日照りが、続いても。」

   「たまには。雨に、なって、ほしいなあ。」って、いったら。

   「ほんなら、『ふるふる坊主』つくったら、ええんじゃ。」いうてね。

   二人で、その話で、盛り上がった、ことが、あったよねえ。おとうさん。

  私たちが、子どもの頃。子供の間で。

  『日和下駄』ならぬ。『ひよりグツ』と、いうのが。はやって、いてねえ。

  『ひよりグツ』と、言うのは。クツの、片方を。

   「ああした、天気に。なあれ。」いうてね。蹴とばすんだよね。

   そして。表が出たら、晴れで。裏になったら、雨が、降るってね。

   私たちが、子供のころ。子供たちの間で、信じられてた。うらないだよね。

  「あしたは。雨か、晴れか。いうて。帰り道で、やっててなあ。」

  「順番に、やるんや。」

  「きょうは。おまえ。あしたは、わしって。」

  それで。

  「わしの番に、なって。やったら。クツが、うらがえしや。」

  「そしたら。みんな、喜んでなあ。」

  「あしたの、マラソン大会は。中止に、なるで。いうてなあ。」

  「みんな、マラソン大会。しとう、なかったんや。」

  「空は、曇ってたけど。あした雨とは。かぎらん。」

  「みんな、喜んでるけど。天気に、なったら。困る思うてな。」

  「それで。作ったんが。『ふるふる坊主』や。」

  「どうぞ、雨が、降りますように。いうてな。」

  「それで、どうなったん。」

  「ちいと、降ったわ。霧雨じゃ。」

  「今じゃったら。やめとけ。いうんじゃけど。むかしは、なあ。」

  マラソン大会が。なくならな、かったけど。

  「たしかに、うらないは。当たるんじゃ。」いうてね。

  それから。ますます、みんな。

   『ひよりグツ』を、信用するように、なったんだよね。

   おとうさんは、おとうさんで。『ふるふる坊主』をね。

  いつか、おとうさんに。

   「おとうさん、作ってるの。おんなじように、見えるで。」いうたら。

   「見てみい。『てるてる坊主』は、顔が。笑ってるやろ。」

   「『ふるふる坊主』は、顔が、泣いてるやろが」いうてね。

   教えて、くれたんだよね。おとうさん。

  わたしは。やっぱり。『てるてる坊主』が、すきだよ。おとうさん。

   どんな、雨の日も。「あしたは、晴れるぞ。」ってね。

    笑顔で、応援してくれる。『てる坊主』がね。

     ねえ。おとうさん。