おとうさん。おはよう。

  きょうは。ガスの、点検日。

   しばらくぶりに、ガス台は。ピッカピカですよ。

   「おまえらしいなあ。」ですか。おとうさん。

  それでね。おとうさん。台所、使えないでしょう。

  遅い、お昼。なんに、しようか。考えて。

   『きざみうどん』に、することにしたよ。おとうさん。

   「簡単に、『きざみうどん』 いうけどなあ。」

   「ひと手間、いるんやで。」いうてね。

   うどん通の、おとうさんの、声が。聞こえて、きそうですよね。おとうさん。

 今は。うどんと、言えば。すぐに。『生めん』を、買って、くるんだけど。

   田舎育ちの、私には。『乾めん』の方が、なじみが、あったんだよね。

   それに。食堂で。「うどん、食べました。」いうても。

    中身は。カマボコ、二枚に。きざみ、ネギ。ていどでねえ。

   こっちに、来て。『きつね』や、『たぬき』や。言われても。

    最初。なにが、『きつね』で。なにが、『たぬき』か。

    さっぱり。分からずに、困ったんだよね。

  そんな時だよね。息子の。幼稚園の、発表会が。

   お城の公園の、近くの。ホールで、あったのは。

    幼稚園の、なんとか記念を。兼ねてね。

   「せっかく。あっこまで、行くんや。うまいもん、食うてこい。」って。

    おとうさん、言うて、くれたのにね。

   かってが、分からず。ウロウロしてて。時間が、なくなってね。

    お城の、前の。おうどん屋さんに、入ったんだよね。わたしは。

    メニューを、見て。ビックリ。

     なんで、こんなに。高いんやろうてね。

    その時。一番、安かったのが。『きざみうどん』でね。

   なにが、出てくるか、分からず。

    『きざみうどん』て、なんやろ。思うて、まってたら。

    うどんの、上に。きざんだ、アゲが。のって、いたんだよね。

     それが、おいしくて、ねえ。

     おなじ、ように、アゲが、入いってるのに。安いし。

    「なんや。得した、きぶんやわ。」いうて。

    言わなくても、いいのに。おとうさんに、はなしたら。 

    「『きざみうどん』は。ひと手間で。うもう、なるんや。」

    「しっかり、アゲの、油抜きしてな。」

    「問題は。うまい、うどんの汁や。」

    「アゲが。汁、すうから。うまいんや。」いうてね。

   しばらくの、間。『きざみうどん』、『きざみうどん』てね。

    練習、さされたんだよねえ。おとうさんに。

    ほんと、おとうさんは。うどんには、うるさいんだものね。

      ねえ。おとうさん。