おとうさん。

  どこも、かしこも。「春節祭。春節祭。」いうてね。にぎわって、ますよ。

  そういえば。おとうさんが。

   「この券。もろうたんやけど。」言うて。

   誘ってくれた。なんとかの、美術展。

  「せっかく。近くまで、行くんなら。」いうて。あの、街に。行ったのに。

   平日やったからか。お店が。どこも、かしこも。閉まって、いてね。

  「本場の、中華そば。食べて、帰ろう。」いうて、行ったのに。

   お目当ての、中華屋さんに。行けな、かったんだよね。

  しかたないから。ここに、来たら。これだけは。いうてね。

   あの。鳥居の、横の。中華まん屋さんに、行って。食べてね。

  「安いよ。安いよ。」の、呼び声で、入ったら。

   ウーロン茶が。いっぱい、あってね。本場の、なんとかや。言われて。

  おとうさんが。いっぱい、買い込んで。しまったんだよね。

   結局。おいしい、中華そばの、はずが。ウーロン茶に、かわってね。

   いつか、リベンジをと、思って、いたんだよね。

  それで、ねえ。田舎に、帰った時。

  「おとうさん。本場の、中華そば。食べに、行かへん。」いうてね。

  さそったら。

  「行くけど。どこや。」言われて。

  「むかし。田舎に、いた頃。友達と。よう、行ってたんや。」

  「しかくとか。三角とか。角の付く、名前でな。」

  「麺が。そうめん、みたいで。」

  「本場の、中華そば。いうだけあって、変わって、るんやで。」言うて。

   前宣伝、しまくって。行ったのにね。 

  「たぶん。この辺に、あったのに。」言うて。入った、店は。

   ほんと、笑えるよねえ。

  見たこともない。おばあちゃんが。二人で、やっていてね。

   リベンジ、どころか。

   わたしが、思ってた、店とは。あまりにも。違いすぎて、いたんだよね。

  あれから、田舎に帰って。中華そばの、話がでると。

   必ず。おとうさん。あの。わたしの、失敗談を出して。笑うから。

   せっかく、おとうさんに。美味しい、ものをと。思っていたのに。

    ひとの気も、しらないでと。思って、いたんだけれどね。

  思い、返すと。おかしいよねえ。おとうさん。

   いつまでも。若い気で、いてね。

    すっかり。年をとって、いたことを。わたし。忘れて、いたんだよね。

    何十年も、たてば。変わるのは、当たり前。

   それなのに。昔の、お店が。そのまま。残っている、ぐらいに。

    思って、いたんだもんね。わたしは。

    ほんと、私って。能天気、なんだからね。おとうさん。

   でも、まあ。そのうちに。

    あの時の。リベンジが、できるような。お店。見つけますからね。

     そしたら。みんなで。一緒に、行きましょうよね。

       ねえ。おとうさん。