おとうさん。おはよう。

  子どもは。親に、よく似るもの、なんだけど。

   いいところも、そうだけど。

   凝り性な、ところまで。二人とも。おとうさん、そっくりなんだよね。

  長男が、一時。漫画の、キャラクターに。凝ってね。

   マント代わりに。おとうさんの、上着を着て。裾ふんで、ひっくり返ったり。

   杖代わりに、長いぼうを。振り回したりと。

   「やめて。」言うても。なかなか、やめなくてね。

  一番。親を、困らせたのは。あれですよねえ。おとうさん。

  「なんや。その、でぼちん。真っ赤やで。」

  「どっかで、打ったんか。」って。

   おとうさんが、言うても。

    痛そうにも、していないから。ほおって、おいたらね。

    だんだん、それが、ひどくなって。

   何かに、かぶれたように。ブツブツまで、でてきてね。

  『どうしたんやろう』って。思って、見ていたら。

   遊びに、出かけるまえに。なにやら、おでこに。貼り付けて、いるんだよね。

   おとうさんの。道具箱にあった、ビニールテープを。

   バッツテン印に。貼って、いたんだよね。

  「そんな物、はって。どうしたんや。」って、たずねたら。

  「あんなあ。これ、はずしたら。パワーが、でるねん。」いうてね。

  テレビで、『なんとかが、通る』って、アニメを、やってた。

   あの、真似。していたん、だよね。

  「いじめっ子が、いたらなあ。これ、はずすんや。」

  「そしたら。ほかの子、助けられるやろ。」いうてね。

   なかなか、やめなくてねえ。

  おとうさん。考えた、あげく。

   日曜日に。長男を。小学校の、運動場に。連れて、行ってね。

   まだ、あの頃。校庭に、あった。吊り輪の、ところに。行って。

   「これが、できるか。」いうたら。

   「こんなの、簡単やで。」いうて。

   得意顔で。吊り輪を、持って。

    クルクル回って、見せたんだよね。おとうさんに。

   「すごいなあ。」

   「おとんには。でけんは。」

   「すごい、パワーやわ。」

   「ほんまに、すごいわ。おまえは。」

   「でぼちん。なんも、貼っとらんのに。できたんや。」って。

   おとうさんに。褒められて、からは。

   おでこに、バッテン。貼らなく、なったんだよね。

  おとうさんが、言いたかったこと。伝わったんだよね。あの時。

   そんなもの、必要ないよ。自分の、力を。信じなさいってね。

     ねえ。おとうさん。