『梅は、咲いたか。サクラは、まだかいなあ。』って。
お昼間の。陽気に、誘われて。マンションの、梅の木。
花盛と、言いたいですが。
大きな木の、伐採ついでに。枝を、払われて。かわいそうに。
花の、かけらも。なくなって。しまいましたよ。おとうさん。
しかたないので。おとうさんと、この季節。よく、行った。
あそこの、神社に。行って、みましょうかねえ。おとうさん。
境内の、中が。梅林に、なっていてね。
「この、時期だけやで。ここ入るの。入場料、いるんは。」ってね。
あきもしないで。二人で。よく、行ったよねえ。あそこには。
境内の、中に。盆梅が。置いて、あってね。
それを、見るのも。楽しみ。だったん、だよね。
いつだったか。滋賀の、あそこで。毎年、開かれている。
盆梅展に。つれて、行って。言うたら。おとうさん。
「そのうちに。」
「ちょっと。遠いわ。」とか。なんとか、言って。
なかなか。
「うん」と。言って。くれなかった、のにね。
ある日。
「わし。盆梅展。行くことに、なったんや。」
「クラブの。割り当て、チケットや。」
「役、してるから。行ってくれ。言われた。」って。
言うんだ、ものね。
あの時は。少々。頭に、きましたよ。おとうさん。
あの、チケットなら。私だって。手に入れること、できたんですもの。
おとうさんと。一緒に、行こうと。思えばこそ。
ああだ、こうだと。言って、いたのにね。
ほんと。勝手に。抜け駆け、したんですからね。
まあね。ちゃんと。お土産。買って、来てくれた。ことだし。
「盆梅なあ。丁度。花の、入れ替えに。当たっ、とったんじゃ。」
「そじゃけえ。あんまり、ようなかった。」って、言われてね。
悪いけど。ちょっと。ニンマリして、しまいましたよ。
でもね。おとうさん。いいことも。あったん、ですよね。
「あそこの、城。覚えとるか」
「きょうは。帰りに、あそこにも。行ったんじゃ。」
「古い。芝居小屋にもじゃ。」
「もう。回り舞台は。動かんかった。」って、言いながら。
いつの間にか。その日の。旅行の、話から。
息子たちとの、旅の。思い出話に、かわってね。
「みんなで、行った時は。塀の近の、木で。カブトムシ、見つけてのう。」
「暑かったけえ。」
「子どもらは。城の、前の。噴水で、水浴びして。」
「それから。古い。芝居小屋に、行って。」
「みんなで。回り舞台を。回したんじゃ。」って、ね。
おとうさんの、抜け駆けを。とっちめようと。思って、いたのに。
そんなこと、忘れて。いつの間にか。
二人で。思い出話に。花を。咲かせて、いたんだよね。
ねえ。おとうさん。