おとうさん。たいへんですよ。

  『一寸先は、闇』って、よくいいますが。ほんとう、ですよね。

  道に、迷ったあげく。高速を。使おうと、したらねえ。

  「おかん。ETCが、きかん。」

  「車に。追いかけられ、とるから。とまれんで。」

  「あっ。通れて、しもうたわ。」ってね。

  ゲートが、くぐれて、しまってね。

  「どうしよう。どうしよう。」って。トチ狂って、いるうちに。

   高速の、出口が、来てね。

  「どうなるんやろ。」

  「出られんやん。」て。言って、いたら。

   係りの、人が。とんで来て、くれてね。

   親切に。対応して、くれたんだよね。ありがたいよね。

  おとうさんと、あの時。来たのは。三月だものね。

   サクラの花の、真っ最中。

   ひな祭りの、イベントに、招待されて、来たんだよね。

   あの時は。どこも、かも。花盛り、だったしね。

  それにね、次男が、道の駅で。財布を、拾ってあげた、時は。

   夏だったん、だものね。おとうさん。

  きょうは。一面、雪で。真っ白、なんだよね。

  「こんなの。初めてや。」

  「きれいやなあ。」

  「おとんにも。みせて、やりたかったなあ。」って。

   二人で、言ってたらねえ

  運転している、次男が。

  「おかん。見てみ。前、虹やで。」

  「雪の、中でも。虹は、出るんや。」

  「やっぱり。おとうさん、来たんやね。」

  「そうやなあ。」

  「おれらの。行くとこ。いっつも。虹が、でるもんなあ。」って。

   いうからね。

  「きょうも。こんな、きれいな。虹が、でたし。」って。

   わたしが、いったらね。

  次男が。

  「きょうは、さんざんやと、思うたけど。」

  「今の、虹で。帳消しやなあ。」

  「あんな。けっこな。雪の中の、虹。見れたんやもん。」て。

   いうんだよね。そして。

  「まっすぐ。前に、進めって。」

  「なにが、あっても。前に、進んどったら。ええことも、ある。」

  「おとんも。そう、いうとるや、なあ。」

   って。言うんだよ。

  ほんとうに、そうだよね。おとうさん。

   前を、見て。歩いてさえ、いれば。

    きょうの、虹のように。いやなことも。帳消しに、なるような。

    ステキな、ことにも。出会えるん、だってね。

      ねえ。おろうさん。