おとうさん。おはよう。

  一日、一日、日が長くなって。

   『まだ、寒いから。布団の、中で。』なんて、思って、いたら。

   気が、つけば。何とかで。外は。すっかり、明るくなって。いるんだよ。

   季節は。春に、向けて。歩き、だして。いるんだよね。

   置いてきぼりを、くわない、ように。

    わたしも。しないと。いけないんだ、けどね。

  暦を、見れば。いまだに、立ち往生してますよ。

   なんと、言っても。まだ、一月。

    おとうさんの、誕生日は。月末だものねえ。

   『おとうさんの、免許』てね。

   去年の、暦には。書いて。あるんだよ。ちゃんと、印を、つけてね。

   おとうさん。新しい、免許。もらいに、行けるって。

    あんなに。楽しみに、してたのにね。

    とうとう。かなわな、かったんだものね。

   「おとうさん。その写真。なんや。人相、わるいは。」

   「そうか。」

   「まあ。おまえより、ましや。」なんてね。

    免許証の、写真を、見ながら。

    新しい、写真も、用意して。待って、いたのに。

     要らなくなって、しまってね。

   なにも、かもが。あの時、止まった、まま。なんだよね。おとうさん。

  おとうさんの、暦には。

   『もうすぐ、誕生日』って。赤丸も、してあるんだよね。

    もうすぐ、誕生日ってね。

  だけど。おとうさんは。あの日から。年、とって。ないんだよね。

   「おとうさんと、わたしは。何歳ちがい、なんよ。」を。

    うりものに、してたのにね。おとうさん。

   おとうさんの、年に。また、一つ。近くなりますよ。おとうさん。

  えらそうに。

   「おとうさんより。若いんよ。」

   「重たいもは。わたしが、もつ。」ってね。

   階段を、先に。トントン、上がって、いたのに。

   「おかん。灯油缶は。おれらが、持つから。」なんてね。

    急に。息子に、言われるように、なってね。おかしいよねえ。おとうさん。

  そんなことより、おとうさん。

   我が家は、なんでも。我が家流。

   やっぱり、おとうさんの、誕生日には。ケーキを、買ってきて。

    お祝いを。しませんか。

    おとうさんの、好きな『モンブラン』を。買ってきてね。

    半分こ、ですよ。おとうさん。

   だって、ねえ。おとうさん。

    おとうさんにも。わたしと、同じように。年を、重ねて。ほしいもの。

   それにねえ。おとうさん。

    そう、しないとね。

   「わたしと、おとうさんは。何歳、ちがうんですよ。」って、いう。

   わたしの、うりも。なく、なって。しまうん、ですもんね。

     笑うでしょ。 ねえ。おとうさん。