おとうさん。おはよう。

  きょうは。大雪警報が、あっち、こっちに、でているよ。

  思い出せば、思い出すほど。

   「なんで、去年と。おんなじ、なんよ。」って、言いたくなるよね。

   おとうさんが。空への、旅立ちの日も。

    小雪が。ちらつく、日だったものね。おとうさん。

   あの日は。わたしと、おとうさんの。

    最後の、『ドライブ』だったんだよね。

    それもねえ。運転手付きの。

   我が家は。バス停も、近いし。歩くの、大好きな。私のこと故。

    それに。たいてい、車だものね。

    おとうさんと、タクシー乗ること、なかったもんね。

   それがねえ。おとうさんの、横に。座ってね。

    「ねえ。おとうさん。」て、いいながら。

    葬儀屋さんの、運転で、行ったんだよね。

    息子たちは、我が家の、車で。追いかけて。きたんだもんね。

   あの時。葬儀屋さん。言ってたよねえ。

   「いい。お見送りですねえ。」

   「いままで。沢山、見てきたけど。こんなの、初めてです。」

   「どんなに。多くの、人が。来ても。」

   「ただ。通りすがりの、ようにね。」

   「気が、付いたら。式が。終って、いたって。」

   「ほとんど、そんなもんですよ。」って、言ってね。

   運手しながら、なぜか。自分の、身の上話を。してくれたん、ですよね。

    わたしの、気持ちを。

     紛らわせて、くれようと。したのかも、しれないけどね。

   「わたしの、田舎は。山の、中なんですよ。」

   「若い時は。都会暮らしに。あこがれて、ねえ。」

   「もうじき、退職します。」

   「帰ったら。のんびり、畑しごと。しますよ。」

   「親の、残した。家でね。」

   「子どもの時。川釣りも。したことも、あるんですよ。」

   「おくさんとこは。海ですよね。」なんて。

   世間話を、しながら。ドライブ、したんだよね。おとうさん。

   気がついたら。到着して、いたんだけどね。

  あの朝。息子たち、二人。おとうさんの、前に。正座してね。

   「おとん。よう聞いてや。」

   「おれら、ふたり。力を、合わせて。やって、いきます。」

   「田舎の、ことも。おかんの、ことも。」

   「かならず。守って、いくから。」

   「見といてください。」ってね。

   口を、そろえて。言ったんだよね。

  正直。ビックリ、したけどね。あの時は。

  自分の、息子を。ほめるのも、なんですが。この、一年。

   ほんとうに。よくやって、くれてると。思いますよ。二人とも。

  「あたり、まえじゃ。わしの、息子じゃもん。」てね。

  どっかから。声が、聞こえて。きそうですがね。おとうさん。

   ちらつく。雪を、見ながら。

    最後の。おとうさんとの、ドライブの、思い出に。

     したって、いますよ。ねえ。おとうさん。