おとうさん。おはよう。

  おとうさん。

   とうとう。別々の、道を。歩くことに、なって、しまったよねえ。

   「ぼくと、結婚してほしい。」って。

    言れた、時から。

   山坂いろいろ、あったけど。いつも。同じ道の、上を。

    二人で、一緒に。歩いて、いたのにね。

    転びそうに、なっても。傍に。おとうさんがいて、助けてくれたし。

    少々の、坂なら。手を、引っ張って。くれたしね。

    大きな、山は。二人で、助け合って。乗り越えて。来たんだものね。

   でも。今は。同じ、道の上を。歩くこは。できないん、だよね。

  いつか、こんな時が、来るって。すっかり、忘れていたよ。おとうさん。

   おかしいよねえ。おとうさん。

  若い時は。自由に。自分の、道を、歩いてね。

   『自由って。一人って。なんて、いいんだろう。』って。

   思って、いたんだよね。

  だから。結婚したいとも。思って、いなかったし。

   おとうさんから。「結婚してほしい」って、言われたときは。

    随分。迷いも、したのにね。

   それが、ねえ。おとうさん。

    二人で。同じ、道を。歩くように、なって。

   いつの間にか。二人で。一つの、道の上を。歩くのが。

    当たり前に、なって。いたんだよね。

   道の、先には。『別れ道』が、あることを。

    すっかり、忘れて、いたよ。おとうさん。

    いつか、また。重なった、道が。別れる、時が。くるってね。

  ほんと、勝手なんだから。おとうさんは。

   今度は。わたしを、残したまま。わたしの、承諾も、得ないでね。

    自分の、道を。さっさと、行って、しまってね。

   取り残された、わたしは。道の、途中で。うろうろ。迷って、ばかり。

    青息吐息って。ところですよ。なさけない。

  若い時のように。

   『一人って、すばらしい。」って、言いながら。

    我が道を。歩くような、元気は。ありませんがねえ。 

  『別れ道』も。その先では。また、重なって。一つの、道に、なるってね。

   そのうち。また。おとうさんと、同じ道を。歩けるってね。

   その、時を。楽しみに。歩いて、行くからね。おとうさん。

    あんまり。先を、行かないでよ。

    時には。一服してね。待っていて、くださいよね。おとうさん。

    わたしの、承諾なしに。先に、行って。しまったの、だからね。

   「わしは。先に、行くぞ。」なんて。聞いてませんよ。

     ねえ。おとうさん。