「あんた。鳥なんだよ。」

  「そんなに。ビビって、どうするの。」

  なんど、言って、聞かせても。

   籠から。ほんの、少し。離れて、いるだけなのに。無理なんだよね。

  「『ぼた』おいで。」って、いってもね。

   飛んで、こないんだよね。

  仕方ないから。籠の、横に。腕を、付けて、あげるとね。

   ハイハイして。出て、くるんだよね。ほんと。情けない。

  この所。色んなことで。忙しく、していてね。

   籠から、出るのが。少なかった、ものね。

   『ぼた』は。飛ぶことを。忘れたと、いうよりも。怖いんだよね。きっと。

  『ぼた』だって。初めて、飛んだことは。あるのにねえ。

  産毛の、ころはねえ。おとうさん。

  「『ぼた』やめて。そんな、とこから。飛ぶのは。」

  「足。折れたら、困るでしょう。」って、いう。

   わたしの、言うこと。聞かないで。

   何度も、鳥籠から、床に。ダイビングしてね。

    わたしの、ところに、やって、きてたんだよね。

  『ぼた』は、頭の、いい子だから。

   あんな。無茶は。しなく、なったんだよね。今は。

  我が家の、息子たちも。

   ハイハイから。歩ける、ように。なったころには。

  おとうさんを、見つけると。

  「おいで。」って。言わないのにね。

  ニコニコ、しながらね。立ち上がって。

  一歩。二歩と。おとうさんに、向かってね。歩いてたんだよね。

  「あっ。あぶない。」と、言う前に。

  バッタンと。勢いよく、たおれてね。

   そんなこと、ものともせず。たちあがって、いたのにねえ。

  それがね。おとうさん。

   長男。大きく、なるに。つれて。

    おとうさん似で。からっきし。高いとこ。ダメに、なってきてね。

  田舎でね。子供たちが。よく、やってた。

   岸壁から、砂浜への、ダイビング。

   次男は。なんなく。こなして、いるのに。

  「こわいよう。こわいよう。」って、泣き叫ぶ。長男に、向かって。

  「そんな、ことで。どうする。」

  「男の、くせに。」って。叫んで、いたんだよね。おとうさん。

   思いだすと、おかしく、なるよねえ。

  だってねえ。おとうさん。あの時。

  「おとうさん。見本を、みせたら、どんなん。」って。

   わたしが。言って、いたとしたら。

  どうなって、いたんで、しょうかねえ。おとうさん。

  『ぼた』の、ビビりを、見ていたら。

  あの時の。おとうさんの、顔を。思いだして。笑って、しまいましたよ。

   この件に、関しては。『目くそ、鼻くそを笑う』ってね。

    おとうさんも、長男も。どっちも、どっち。

    おとうさん似の、長男を。笑う訳には、いかないんだよね。

     そうでしょう。 ねえ。おとうさん。