おとうさん。おはよう。

  「わが、人生に、悔いはなし。」って。

   言える人が。何人。言えるで、しょうかねえ。

  この世に、生まれて。必ず。人は、あの世に、行くんだけどね。

   おとうさんは。歌の、もんくじゃ、ないけれど。

   『心の、命ずるままに』生きれたんで。しょうかねえ。

  おとうさんは。随分、遠回り。したんだけどね。

   結果的には。自分の、なりたいものに、向かって。突っ走ったん、だから。

   そして。自分の、したい。仕事に。ついたんだ、もの。

    『心の、命ずるままに』生きたんで、しょうねえ。おとうさんは。

  おとうさんが、お金が。無いが、故に。学校に、行けなかったこと。  

   なんでも。独学で。がんばった、こと。

  その。ひとつ、ひとつが。我が家の。『誇りでも。』あったんだよね。

   「うちの、おとんは。中学から、丁稚奉公に、きたんや。」

   「うちの、おとんは。夜間高校で、がんばったんやで。」

   「今の、しごとは、なあ。教科書もろうて、勉強したんや。」言うてね。

   自分たちは。大学まで、いってるのに。息子たちは。

    かえって。学歴のない、父親が。独学で、頑張ったことが。自慢でねえ。

   「おとん。おとん。」てね。

   おとうさんは。息子たちの。尊敬の、まとでも。あったんだよね。

  結婚して。はじめて。団地に、住んだ。わたしは。

  「おとうさんは。結婚さぎやわ。」

  「田舎で。お母さんから。聞いてた、話とは。随分、ちがうで。」って。

   冗談を、言っては。二人で。よく、笑ってたけど。

  おとうさんは。自分が。苦労した、ことの。半分も。

   実家には。話して。いなかったん、だよね。

   だから。おとうさんが。どんな、暮らしを。していたか。

    田舎の、みんなは。知らな、かったんだよね。

   真面目で、いい人には。間違い、なかったけど。

    お母さんの。思い描いて、いたような。出世コースとは。

    縁遠い。ものだったん、だよね。おとうさんの、生活は。

   まあ。それは。それで。よかったん、だけどね

  他人さまから、見れば。ないない、ずくしの。人生だったけれど。

   息子たちには、自慢してもらえる。

    誇れる、父親。だったんだよね。おとうさんは。

   心を。殺して、生きるより。

   ないない、ずくしでも。『こころの、命ずるままに』いきてきた。

    おとうさんの、ように。

     息子達にも。生きて、いって。ほしいよねえ。

      ねえ。おとうさん。