おとうさん。おはよう。

  おとうさん。『人は、見かけに、よらぬもの。』って、いうけれど。

  この間。向かいの、人が。いうんだよ。

   「ご主人。スポーツ。なんでも、こなすんだよね。」って。

   「体形からみて・・・」なんだって。

   はっきり、言うよねえ。おとうさん。

   「そうなんよ。ああ、見えてね。なんでも。そこ、そこにね。」って。

    ついつい。おとうさんの、自慢話を。してしまったよ。

   本当に、おとうさん。なんでも。できるんだ、ものね。

  特に。『なわとび』だよね。

   冬に、なると。学校ではね。

    あの、『なわとびカード』と。いうのが、あってね。

    一つ、種目が、できるごとに。ハンコが、もらえたからね。

     息子たち。頑張って、いたんだよね。

    でも。『二重とび』ここで、足踏み状態に、なるんだよね。

  団地に、いた頃は。学校の、校庭は。自由に。出入りが、できてね。

   放課後や、日曜日は。中で。遊んでも、よかったんだよね。

   特に。あの、山の上の、小学校は。みんなの、遊び場でも。あったんだよね。

   日曜日には。親子、四人で。よく、遊んだよね。

   それに、見晴らしが、よくてね。

   山の下を、通る。電車が、見られてね。

    とっても。いい、場所。だったん、だよね。あそこはね。

  だから、なわとびの、練習も。あそこで、したんだよね。おとうさん。

   「あのなあ。なわとびを。手に、二重に、まいてなあ。」

   「こうやって。跳ぶんや。」

   「そうやない。」 

   「もっと、高く。とぶんや。」

   「つなは。早く、まわせ。」

   「ちがう、言うとるやろ。」

   「もっと、高く。」

   「もっと、はやくや。」言うて。

   見てる。おとうさんの、方が。力が、はいって。

    そばで、ポン、ポン。跳んだり、してね。

   「おとん。あっち、いって。」

   「そこで。ポン、ポン。やられると。跳ばれへん。」いうてね。

    言われても。ついつい、よって、行ってね。

    こうしゃくを、言ったんだよね。おとうさんは。

   あれだけは。おとうさんに、似ず。わたしに、似たと、みえて。

    なかなか、上達、しなかったよね。おとうさん。

   それでもね。あの、『なわとびカード』

    なんとか。ハンコウ、もらってね。

    今でも、うちに。残っているよ。おとうさん。

   息子、たちが。頑張った、あかしだものね。

    思い出、箱の。中に。大事に。入れて、おくからね。おとうさん。

   おとうさんと、息子たちの。

    大事な。思い出が、つまった。カードだものね。

     ねえ。おとうさん。