おとうさん。わたしは。相変らずの、あわてんぼう。
「ちゃんと。用意は。できたか。」って、言われて。
「できたよ。」って。いって。
出かける時。忘れ物を、しなかったことは。ないんだけどね。
また、また。忘れものだよ。おとうさん。
頑張って。おせち料理、作ったのにね。
味は、ともかく。
「これは。おかんが。作ったんやで。」って。
長男が、およめさんの、前で。折角。自慢して、くれたのにね。
「お雑煮の、用意は。できたし。さあ、食べよう。」って。
食べ始めて。
「なんか。たりないな。」って。思ってね。
それでも。気づかな、かったんだよ。
「ゴマメは、なあ。」
「クワイは、なあ。」って。息子が。
おせちの、言われを。言い始めても、気づかず。
料理を。半分。食べ終わった、頃に。
「あっ。一品。たりない。」って。
気が、付いたんだよね。
あの、昆布巻きだよ。
『よろこんぶ』って、言う。
いつもの。ニシンの、昆布巻きだよ。おとうさん。
いつもの、ように。マンションの、冷蔵庫に。忘れてきて、いたんだよね。
おとうさんが。元気だったら。
「おまえ、らしいなあ。」って。言われ、そうだよねえ。
そんな、アクシデントも。話のたね。
作った、料理は。
「うまい。」『うまい。」と。
みんな、食べて、くれたんだよね。おとうさん。
一番、うれしかったのは。
『箸が転んでも、おかしい』って、いうでしょ。
たいした、ことでもないのに。笑いが、おこってね。
およめさんも。一緒に。声を、出して。笑って、いるんだよね。
去年の。今日の、食卓とは。大違い。
去年は。暗く、悲しい。さみしい。食卓、だったのにね。おとうさん。
たいした。ごちそうとは。言えな、かったけど。
お節を、作って。よかったよ。おとうさん。
笑いを、さかなに。みんなで、囲む。食卓は。
やっぱり。いいもの、だよね。おとうさん。
どんな。ごちそう、よりも。食卓には。
やっぱり。みんなの、笑いごえが。一番だよね。
おとうさんも。そう、思うでしょ。
ねえ。 おとうさん。