おとうさん。おはよう。

  「ああ。不覚。」

  「きのうは。自分で、作った、甘酒で。気が付けば。夢の中。」

  うたた寝を。してしまったよ。なさけない。

  「ほじゃけえ。おまえは。甘酒のんでも。」

  「運転どころか。家事も、でけん。」いうて。

   おとうさんに。言われ、そうだよね。おとうさん。

  「おかん。甘酒せん。」

  「作ったら。おれも、飲むわ。」って。長男に、言われ。

  「ええよっ。」て。作ったん、だけどね。

   たった。コップ、半分。飲んだだけで。

   気が付けけば。

   「ああ、寒い。」うたた寝。まっただなかだよ。

   ほんと、笑えるよねえ。おとうさん。

  こんな、私だから。おとうさんと、二人で。飲みに、行ったのは。

   あの、炉端焼きに。たった、一回。行った。だけ、だったよねえ。

   ちまたで。炉端焼きブームが、起こってた。時だよね。

  「おとうさん。炉端焼き、しっとる。」

  「みんなが、炉端焼き。炉端焼き。いうんよ。」

  「一回。行ってみん。」

  「行っても。ええけど。どんな、所か。知っとるんか。」

  「知らんから。言うとるんよ。」言うてね。

  あまり、気の進まない。おとうさんに。連れて、行って。もらったんだよね。

  「なに、注文するんや。」いわれても。

   わたしが。注文できそうな、ものは。

    『サンマの、塩焼き』だけ、だったんだよね。

  結局。あの日は。おとうさんも。サンマを、つつきながら。

   一本、飲んで。帰って、きたんだけどね。

  「炉端焼き。いうから。いろんなもん。焼くんかと、思うたのに。」

  「イロリ、みたいなん。一つしか、ないんやもん。」

  「わたしらは。カウンターで。サンマ、食べた。だけや。」いうてね。

  おとうさんに。文句を、言ったらね。

  「ほじゃけえ。言うたじゃ。ないか。」

  「ほんまに、行きたいんか。いうて。」って。言われてね。

  『どんな、ところやろ。』って。思って、行っただけに。

   ガッカリした。思い出が。あるよねえ。おとうさん。

  食べた、サンマの、値段の、高かさに。ビックリし。

  「あの、サンマより。」

  「おとうさん。うちで。食べる、方が。ええやろ。」って。いったら。

  「もちろんや。」

  「そやから、言うたやないか。」って。

   おとうさんに、笑われたよね。

  わたしに、とっては。

   いい、人生勉強に、なった、日でも。あったんだよね。

  今、思えば。あの、炉端焼きに。行ったのが。

   わたしの、最初で。最後の。おとうさんと、二人で、行った。

    居酒屋の、思い出だよね。

     ねえ。おとうさん。