「ひやあ。『ぼた』やめて。」

  「やめてと、言うのに。もう。」って、言ってる間に。

   そこいらじゅう。鳥の毛だらけ。

   私が、「わあ、わあ。」言うもんだから。

    反対に。かまって、もらってると。思って、いるんだよね。

   『ぼた』の。喜ぶことと、いったら。

  籠の、中の毛が。部屋中に、散らばって。大変だよ。おとうさん。

  去年。我が家に、来たころは。フワフワ、モコモコ。

   毛玉の。かたまりの、ような。子だったのにね。

   私の、手の中が。好きで。

    私の、手の中で。毛糸玉のように。丸まって、「ピーピー」鳴いてたのに。

  春先には。一人前の。羽に、なって。

   それが、今。生え変わって、いるんだよね。早いよねえ。

  「籠の中は。わたしの、部屋。」と。言わん、ばかりに。

   きれい好きの、『ぼた』は。バタバタやってね。

   籠の中から、抜けた毛を。外に、出して。いるんだよね。

  冬毛に、変わってね。

  『ぼた』も、冬支度と、いった。ところかな。おとうさん。

  おとうさんの。今、飾ってある。あの、写真。

   どれも。これも。半袖で、ねえ。

    元気なのは、いいけれど。これからは。ちょっと、寒そうだものね。

   息子たちに、相談して。

    おとうさんの、写真も。

     そろそろ。冬支度、しないと。いけないかなあ。おとうさん。

    写真に。服を、着せる訳にも。いかないしね。

   あれや、これやと。写真の、束を。ひっくり、返してね。

    それらしい、写真を。探すんだけどね。

   「これは、若すぎる。」

   「これは、どうとかだ。」ってねえ。

   帯に、短し。たすきに、長しってね。なかなか、ないんだよね。

  それでね。とりあえず。二人で、写っている。写真を、飾ったんだけど。

  これじゃあ。『迎えにおいで。』じゃなくて。

   笑って、しまうんだけど。

   まるで。『あの世への。道行きって。』とこだよね。おとうさん。

  だってね。仲良く、二人で。並んで、歩いて。いるんだものね。

   おとうさんと、仲良く。二人でね。

  いつか、本当に、おとうさんと。こんな風に。

   あの世を。散歩、するように。なるんだよね。おとうさん。

   そう、思うとね。この、写真も。まんざらでも、ないよね。

     ねえ。おとうさん。