おとうさん。おはよう。

  ことしも。後、ひと月。

   カレンダーも。めくれば。一枚に、なって。しまいましたよね。

  「今年の、一年は。なかつたことに。来年は。来年は。」って。

  いうのが。去年の、今頃の。おとうさんの。口ぐせに、なっていたのにね。

   年明けに。あの世、ですものね。おとうさん。

  あれよ。あれよと。言う間もなく。

   おとうさんが、口に、していた。『来年』が。

    今度は。過ぎようと、していますよ。おとうさん。

  人の、人生。いいだの、悪いだのと、言っても。

   その、いいこと。悪いこと。全部含めて。その人の、人生なんだよね。

  きのう、長男がね。

  「おとん。ほんとうに。人に、好かれとったんやなあ。」って。

   言っていたよ。

  「どこに、行っても。人気もの、やったんや。」ってね。

  「ほんなら。あんたも。ええ、おとんに。なりや。」言うたらね。

  「おう。おう。」って。メールが、きたよ。おとうさん。

  いつだったか。長男が、こんなこと、言ったこと。あるんだよ。

   「おとんに、何かあったら。次男が、泣く。」

   「おかんに、何かあったら。俺が、泣くやろなあ。」ってね。

   次男は。むかしから、おとうさん子でね。話も、合ってたし。

    家から、学校も。通ってたしね。

   長男の、方は。高校を、出てからは。一人暮らし、だったものね。

    男同士で。話す機会が。少なかったん、だよね。

  だから、大事な、話になると。

   おとうさんは。「おまえから、言うとけ」って、言うし。

   長男は、長男で、「おかんから、おとんに。」って。ことに、なって。

   ふたりで、話すことは。少なかったんだ、ものね。

  それがねえ。

   ちょっとした。退院の、間にも。お互いに、人生を。語り。

   おとうさんの、入院を、通して。長男は。

   「あいつが。あそこまで。やれるとは。」って。

    おとうさんに、言って、もらえるように。なったんだものね。

  『人生、苦しい時。辛い時が。一番。その人に、とって。実りの時だ。』って。

   よく、言われるけど。

   「なに、言うとん。そんなこと。あるもんか。」ってね。

   おとうさん。言いたいよねえ。

   ほんと、消えて欲しいような。

    苦しい、辛い。一年、だったんだもね。おとうさんに、とってはね。

  でもね。その、『消してしまいたい。』と、思う。一年が。

   我が家の、みんなの、心を。豊かに、したんだものね。おとうさん。

   やっぱり。日々の。いいことも、悪いことも。

    全部、ひっくるめて。

     はじめて。『人生』と。呼ぶんだろうね。

      ねえ。おとうさん。