『気に足るまで、やらせ。』言うてね。

  この、言葉。気が済むとは。ちょっと、ちがうんだよね。

   本人が。満足するまで、やらせと。いう、ことだものね。

  『気に、足るまで。』そう、言いながら。おとうさんは。

   お稽古ごとでも。なんでも。二人の、することは。させて、いたよねえ。

  おとうさんは。自分の、兄弟とは。年の差は。離れているし。

   中学を出て。すぐに、集団就職で、こっちに、来たから。

   小さい頃の、兄弟げんかの、記憶は。無いだろうと、思うんだけど。

   兄弟げんかさえ。

   「怪我せんかったら。気に足るまで、やらしとき。」

   「気に、足ったら。やめるけえ。」言うてね。

   まあ。男の子同士やから。それは。それで。大変でしたよねえ。

    口より、殴り合いだものね。

    一部。物が、壊れることも。あったりね。

   喧嘩の、原因が、なんだったか、分からないうちに、始まり。

   気が付かない、うちに。喧嘩が。終わっててね。

    後は、仲良く、遊んで、いるんだからね。

    二人とも。気が、足りたと、いうことだよね。

  『気が足る』と、言えば。我が家の、次男。大の、負けず嫌いでね。

   殴り合いの、喧嘩に、なったら。

   『兄ちゃんより。一つ、多く、なぐりたい。』そう。思うらしくて。

   最後に。ゆびの、先で。兄ちゃんを。

   『チョン』と。突っついて、いたんだよね。

   それで。次男の、気が足りたのか。

    いつも。喧嘩は、終わりに。なるんだけどね。

  いまでは。それこそ、兄弟げんかも。気に足りて、満腹状態なのか。

    とても。なかが、いいんだよね。おとうさん。

  人生、なにが、出来ると、言う訳では、ないけれど。

   なんでも。『気に、足りるまで』精一杯。

   やらないと、いけないと。いうことだよね。おとうさん。

  おとうさんが、一生を、通して。息子達に、示した。手本のようにね。

  だから。息子たちも。これから先。なんでも。

   気に、足るまで。やったら、いいと。思うんですよね。

  「成功するか、失敗するか。それは、また。別のことじゃ。」

  「人の、評価は。どっちでも、ええ。」

  「ようは。お前の、気は足りたんか。」

  「中途半端で、やめるな。」ってね。

  おとうさんなら、言うでしょうね。息子たちに。

  人の評価は、気にしないで。気に足るまで。精一杯、生きてこそ。

   おとうさんの、息子。

  そしてね。

  「ああ。わしの、人生は。ええもんじゃった。」って。

  最後に、言えた。

   おとうさんの、ように。なれるのかも。しれないよねえ。

    ねえ、おとうさん。