「きょうの、昼は。焼きそばで、ええ。」 

  「なんでも。ええよ。」ってね。

  ひさびさの。息子との。なんとも、のどかな。会話、だよね。

  去年の、今頃だったら。

  「いつ。病院に、行く。」

  「なに。持って行こうか。」ってね。

  毎日、毎日。慌ただしく、していてね。

  「きょうは。いつ、行っても。ええんよ。」って。言うてね。

   特に。土、日は。自分たちの、ご飯どころでは。なかったよね。

  たいてい。病院の、帰りに。

  「おかん。なんか。買うて、帰るか。」ってね。

   適当に。お昼は。すませて、いたんだものね。

  だから。日曜日に。台所に、立って。『さて、』と。思った時。

   こんなに。ゆっくりした、時間が。あったんだ、ってね。

    改めて。思ったよ。おとうさん。

  おとうさんが。元気だった、頃は。ねえ。

   こんな。穏やかな日の、昼時は。

   クラブから、帰った。おとうさんが。

    台所の、テーブルの。いつもの、場所に。座ってね。

  「そうじゃのう。いっぱい、もらおうか。」って。言う、声がね。

   聞こえて、きてたんだよね。おとうさん。

  我が家の、台所。また、元のように。

   静かな、台所に。戻ったん、だけどね。おとうさん。

   もう。「いっぱい。もらおうか。」ってね。

   そう、言う。おとうさんの、声は。

    もう、どこからも。聞こえて、こないんだよね。おとうさん。

  せっかくの。穏やかな、こんな日が。

   台所に。帰って、きたと。いうのにね。

  「おとうさん。きょうは。焼きそばでも、ええ。」って。聞いたら。

  「なんでも、ええよ。かまわんけえ。」

  「それより、先に。いっぱい、もらおうか。」ってね。

  おとうさんの、元気な、声だけが。聞こえないん、だものね。

   やっぱり、さみしい、ものだよね。

  穏やかな、日では。あれば、あるほど。

  台所に、立って。振り向いた時。

   山の、コダマじゃ。ないけれど。

   「おとうさん。」って、いってね。

   「なんじゃ。」って。

   答えが。返って、こないのは。やっぱり。寂しい、ものですね。

   「おとうさん。」と、いったらね。

   せめて。一言ぐらい。

   「なんじゃ。」ってね。答えて、ほしいよね。

   こんな、穏やかな、日は。特にね。

    ねえ。 おとうさん。